最も多い通信困難者は、親族に頼れない、40~50代独身男性
山本さんのように、コロナ禍などをきっかけにスマホ料金を滞納し、社会とつながれなくなってしまった人々の存在は決して無視できない。
こうした人が増えたことをきっかけに政府は2020年度、過去の滞納歴によりスマホを持てなくなってしまった人も契約しやすいスマホ事業者のリストを作成。
定期的に最新の情報を各自治体に周知し、こうした事業者を通じてスマホを契約できる可能性があることを生活困窮者らに知らせるよう、促している。
山本さんもこの取り組みがきっかけで、自身もスマホを持てる可能性があると知った1人だ。
山本さんが頼ったのは、株式会社アーラリンクが展開する「誰でもスマホ」。
過去の滞納歴があっても、クレジットカードや銀行口座がなくても、現住所記載の本人確認書類(マイナンバーカードなど)1点さえあれば、誰でも(未成年者や反社会勢力は除く)契約できる。
同社の高橋翼代表取締役によると、現在の利用者約8万人のうち、男性が75%を占め、その中でも特に多いのが40代後半から50代の独身男性だという。
「家族や親戚を頼ることができず、社会的に孤立している方が、社会復帰のための『最初のインフラ』としてスマホを契約するケースが目立ちます。
電話番号がないとさまざまな場面で不審がられ、私たちの調査では、スマホを持てなかった期間に就職活動をした人の3分の2が『採用してくれた企業がなかった』と答えています」(髙橋氏)
何らかの事情で住居やスマホがない人が社会復帰していく順番は「住居、スマホ、口座開設」だという。
まさに山本さんは、市営住宅に入居した後、スマホを契約。今は口座を開設できていないが、徐々に社会復帰を進めている段階だ。
「住居がないと現住所記載の本人確認書類を出せないので、スマホが手に入らない。電話番号がないと口座を開設できない。
だからこそ、住居確保を支援している行政やNPO法人から、社会復帰に向けた次の段階としてスマホを持てるよう、私たちのような業者につないでもらいます」(髙橋氏)
山本さんは「自治体によっても、窓口の職員によっても対応は違った。私自身、それまでと違う自治体の職員と話して初めて、滞納歴があっても契約できるスマホの存在を知った。
こうしたサービスが広く認知され、困っている人がどの自治体、どの職員に相談しても教えてもらえるようになれば」と願っている。
スマホを持てないと社会との接点を保つことが難しくなっている今、民間事業者だけでなく国、自治体が一体となって通信困難者を支援し、孤立を防ぐことが求められている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

