サメに誤解を与えていた『ジョーズ』へのカウンター
実際にショーン・バーン監督のサメ映画への向き合い方も真摯に思える(良い意味での軽さも見える)ものだった。プレス資料から引用しておこう。
「シリアルキラーものとサメ映画はこれまでにない斬新な組み合わせで、作品の核となり、確実に注目を集められるハイコンセプトだと思ったんだ。分かりやすい敵がサメではないサメ映画を作る機会に恵まれ、とてもワクワクしたよ。もし『ジョーズ』がサメを怪物に仕立てあげてしまったのなら、遅ればせながらこの映画で残酷な誤解を解くことができるだろう。真の怪物は人間だ!!」
この言葉通り、サメが過剰に狩猟の対象となってしまったのは、サメを恐ろしい存在として描いた『ジョーズ』の影響が強いという見方があり、後年にスティーブン・スピルバーグ監督はそのことを後悔していると明言していた。
前述したように本作でのサメは「武器」かつ「利用される側」のように描かれている部分も多いのだが、だからこその「それだけではない」姿も際立っているし、少なくとも『ジョーズ』のような“ただ人間を喰らうだけの怪物”になっていない。それをもって、作品自体が『ジョーズ』のカウンターになっているような構図もあるのだ。
また、「◯◯よりも人間が怖い」というのは、ホラーにおいては使い古された常套句のようではあるが、実際に本編でのサイコパス船長はサメよりも恐ろしく思えるし、その反面として「人間の気高さ」も讃えているように思えた。
それを示したかのような、終盤の主人公ゼファーの「選択」と「変化」は涙が出てくるほどのものであったし、彼女のように「ここではないどこか」に逃避したいと考えていた人にとっては、本当に福音になり得るだろう。ぜひ、「意外な感動」にも期待して、この『デンジャラス・アニマルズ 絶望海域』を楽しんでほしい。

