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今レトロゲームに惹かれる理由「最高のゲーム」は10歳のとき遊んだゲームだった

今レトロゲームに惹かれる理由「最高のゲーム」は10歳のとき遊んだゲームだった

なぜ10歳の頃にしたゲームが「懐かしさ」をもたらすのか?

最高のレトロゲームは「10歳のとき」に遊んだゲーム機にあった
最高のレトロゲームは「10歳のとき」に遊んだゲーム機にあった / Credit:Canva

10歳前後という年齢には、私たちの記憶や心の働きにおいて特別な要素がいくつも重なっています。

しばしば「リミニッセンスバンプ(Reminiscence Bump)」という言葉が使われますが、これは人が一生のうちで特に鮮明に覚えている思い出が10歳から20代前半に集中する現象を指す概念です。

なかでも10歳前後は、小さい子どものように受動的に世界を眺める段階を抜けだし、自分で物事を選んで行動し始める時期でもあるため、「自分が好きで、夢中になってやっていたもの」が特に記憶に残りやすいと考えられています。

子どもは10歳前後になると、ただ“与えられたものを楽しむ”のではなく、自分で「これが面白い」「あれは好きじゃない」と判断できるようになっていきます。

心理学の視点では、この頃から他者との比較や自己認識が発達し始め、趣味嗜好をより主体的に形成していくのです。

つまり、自分の“好き”や“楽しい”を自分自身が積極的に選び取っている感覚が強く、同時に感情も大きく揺さぶられます。

そうすると、「あれが好きだった」「あのとき大興奮した」というエピソードが、強い感情と結びついて記憶に深く刻まれやすくなるのです。

また10歳前後は多くの人が初めて“本格的に”何かにハマる時期でもあります。

スポーツや音楽、ゲーム、漫画など、すごく好きになるものが初めてできると、それが「衝撃」として脳に鮮明に焼き付きます。

専門用語で「初期衝撃(initial impact)」という表現が用いられることもありますが、この“最初の強い感動”が大人になっても思い出をよみがえらせる強力なトリガーとなりやすいのです。

ゲームで言えば、ファミコンやスーパーファミコンのゲームが初めて家にやってきたときのワクワク感は、後から登場した高性能ハードよりも深い印象を残す――そういう人が少なくありません。

脳科学的には、「海馬(かいば)」と呼ばれる記憶を司る部位が徐々に成熟する時期とも重なっています。

海馬の成長期にあたる子どもの頃は、ある意味で“新しい記憶を定着させる力”がとても活発な状態です。

大人になると情報はより論理的に整理されていきますが、子どもの頃の記憶は感情や五感と結びついて保存される傾向が高いという研究報告があります。

たとえば「昔のゲーム画面を見ただけで当時の部屋の匂いや、友達と遊んでいたときの天気まで思い出す」といった経験は、多感な脳の働きによるところが大きいのです。

さらに社会的文脈においても10歳前後は重要な時期です。

子ども時代は、家族や友達、学校など、生活圏がシンプルかつ閉じられた世界になりがちです。

ゲームで遊ぶときも「友達の家に集まってみんなでやる」「家族で一緒に楽しむ」といった形で、周囲とのコミュニケーションが深く絡み合います。

大人になるとゲームは一人でプレイしたり、オンラインで知らない人とマッチングして遊ぶ機会も増えますが、子どもの頃のような“身近な仲間との密接な思い出”は得がたいものになります。

結果的に、10歳前後のゲーム体験は、家族や友だちの顔までも一緒に脳裏に浮かぶような強いノスタルジーを誘発しやすくなるのです。

これらの要因が重なって、10歳前後の体験は大人になってからでも色あせない“かけがえのない記憶”として残りやすくなります。

古いゲームの起動音を聞いただけで“あの頃”に気持ちが一気に戻ってしまうのは、まさに自我意識の芽生え時期にできた“強烈な記憶のしこり”を刺激するからだと考えられます。

たとえ最新のハイエンドゲームであっても、最初に触れたあのときの衝撃には勝てない――そんな言葉が聞かれる背景には、こうした心理学・脳科学的メカニズムがあるのです。

今回の研究は、プレイヤーの実際のプレイデータに基づいてこれらの傾向を数字で示したところに大きな意義があります。

これによって、「ノスタルジアが多くの人の心を動かす」という感覚的な話題に対し、「どの年代が、いつ頃のコンテンツを、どれほど遊んでいるか」というより精密な視点が加わりました。

今後さらに、ゲームの保存やリメイクに力を入れる企業が増えることで、レトロゲーミングの市場は加速していく可能性があります。

また、高齢化するゲーマーの新たな余暇活動として、あるいは「親が子どもに昔のゲームを教える」などの交流手段としても、一段と注目を集めそうです。

一方で、今回の結果がすべてを語り尽くしたわけではありません。

任天堂という特定ハードのデータに限られている点や、プレイヤー個々の「どんな人生背景を持ち、なぜそのゲームに惹かれるのか」といった詳細な要因までは踏み込みづらいという限界はあります。

とはいえ、こうした制約を考慮しても、“10歳前後の思い出こそが私たちをレトロゲームへ導き、思い出の中で生き続けている”という傾向が大規模な数字から浮き上がってきた意義は大きいでしょう。

ゲーム文化が今後どんな発展を遂げるにせよ、幼少期のインパクトがこれほどまでに後々まで響くことを考えると、好きだったタイトルをもう一度遊んでみる価値は十分にありそうです。

元論文

Reliving 10 years old: Descriptive Insights into Retro Gaming
https://doi.org/10.1037/ppm0000666

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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