いつしか“伝説のイベント”となり、渡戸地区が誇れる場所に
泥んこになってしまった、というよりも、泥んこになりにいってしまう。普段では決して味わえない非日常と開放感はかけがえのない経験になる運営の裏側は、“競技大会”というより“地域の学園祭”に近いかもしれない。根橋さんは「農家からトマトやキュウリを集めて冷やして食べてもらったり。おにぎりやとん汁を600人分作ったこともある」と話す。
さらに、田んぼは“土”のコートだ。「試合の後は、泥が減っちゃうから土地は少し凹むから、ダンプカーで土を運んで入れて整形することもある」と船木さんは語る。
何より参加者に楽しんでもらいたい。その真摯な想いによって利益を度外視したイベントは反響を呼ぶが、労力は限界に達し、どろん田バレーは2018年に惜しまれつつ閉幕した。理由は高齢化に伴う人手不足。しかし、復活を望む声が年々高まる中、2022年に4年ぶりに復活を果たす。その声は、地域内外の若者による熱意と「共創」という新しい運営スタイルが確立されたためだという。
当時を知る松岡さんはこう話す。「準備はとても大変でした。でも伝説のイベントに携われたことはとても貴重な体験でしたし、復活できたことは何より嬉しかったです。これからも若い人たちが一丸となって、どろん田バレーを継承したいと思います」
どろん田バレーが一貫しているのは、行政に頼らない地域住民主体のイベント運営だ。もたらしたのは、経済効果以上に“誇りの再編集”である。根橋さんは渡戸地区はかつて日照時間が少なくなることから「日陰村」「半日村」と呼ばれた背景を語ったうえで、こう結ぶ。
「どろん田バレーをはじめてから『半日村』って言葉を聞かなくなった。『渡戸って賑やかでいいね』って言われると、悪い気はしない。少し誇りを持てたかなと思います」
泥にまみれる一日は、参加者にとっては“忘れられない夏”となり、住民にとっては“郷土愛”になっていく。スポーツが、地域のプライドを更新していく瞬間でもある。
<2026年度のどろん田バレー開催予定>
2026年7月18日(土)~19日(日)
https://dorontatatsuno.wixsite.com/doronta
text by Akihiro Ichiyanagi(Parasapo Lab)
写真提供:どろん田バレーボールフェスタ実行委員会
