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『スマッシング・マシーン』ドウェイン・ジョンソンが演じる“世界最強”の崩壊と再統合

『スマッシング・マシーン』ドウェイン・ジョンソンが演じる“世界最強”の崩壊と再統合

“最強”の自己像が壊れるとき

強くなければならない、勝たなければならない、“最強”でなければならない、そして賞金を稼いで帰らなければならない――。そんな自己像が破綻したとき、ケアーは崩壊する。格闘家としての自分と、本来の自分自身の感情が噛み合わなくなってしまうのだ。そのとき、大きな身体のなかには、幼い子どものごとく脆い精神がある。

ケアーの引き裂かれた性質を間近でもろに受けるのが、恋人のドーン・ステイプルズ(エミリー・ブラント)だ。映画の冒頭で、ドーンはマークのためにシェイクを作ろうとしている。残念ながらマークが求めるレシピとは違っていたが、ドーンができるだけ献身的であろうとしていることはそのワンシーンにも表れている。

ところがドーンは、マークが試合に敗れる前から、ある寂しさを抱えている。彼女はリングで戦うマークに近づけない感覚にさいなまれており、試合前に集中しているマークがつれない態度をとることに耐えられない。しかも、マークが自らを負傷させた対戦相手――ドーンにとっては恋人を傷つけた男だ――に笑顔を向けるなか、自らは写真撮影係になることしかできない。

両者の関係は帰国後にますますこじれてゆく。献身的に世話をしたいと考えるドーンに対し、挫折を味わったマークは、自分が男として見られていないのではないかという不安に襲われる。マークは依存症と戦いながら、必死に自分を律そうとするが、頼られないドーンにとってはそのことが寂しく、つい感情を抑えきれなくなる。

そして、マークが怒りをあらわにすると、自宅のドアは真っ二つになる。“スマッシング・マシーン”であるマークが、その能力をリングの外で発揮するとき、それは恐るべき脅威そのものだ。お互いに愛しているはずが、やがてズレは大きくなり、相手を苛立たせ、ついには傷つけてしまう。

マーク・ケアーの闘争

マークはあらゆる場所で闘争を繰り広げている。リング上=試合中は対戦相手と戦い、プライベート=リング外ではドーンと戦う。PRIDEの開催地である東京では公的な戦いを、アリゾナ州の自宅では私的な戦いを。そして、ひとりの時間には自分自身と戦っているのだ。

パブリックな空間における自分と、プライベートな時間の自分。社会的な顔と、家族や友人、恋人だけに見せる顔。格闘家でありスーパースターとしてのマーク・ケアーと、そのプレッシャーに耐えきれない個人としてのマーク・ケアー。こうしたペルソナの分裂は、決して格闘技に詳しくない観客にとっても身近なものではないか。

なぜなら、人間は社会生活を営むなかで仮面をかぶりながら生き、その二重性にどこかで葛藤しているからだ。マーク・ケアーの場合は、その仮面がたまたま最強の格闘家だった。きっとドウェイン・ジョンソンの場合は、元レスラーの“ザ・ロック”であり、同じく最強のアクションスターだったのだ。

配信元: otocoto

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