お笑いだけでなく、さまざまな方面で活躍する笑い飯・哲夫による3作目の小説『頭を木魚に』(主婦の友社)が5月13日(水)に出版されました。発売翌日には、東京都内で約60人のファンを前に記念トークショーとサイン本お渡し会&2ショット撮影会を開催。漫談と法話が入り混じったような、哲夫ならではのトークでファンを楽しませながら、著書の見どころなどを語りました。

「天寿を全うしたい」と思える本になれば
哲夫にとって記念すべき10冊目の著書となる『頭を木魚に』は、小説としては『花びらに寄る性記』(ヨシモトブックス)、『銀色の青』(サンマーク出版)に続く3作目です。
これまでは中学生や高校生など思春期の男子を描いてきましたが、今回はタクシー会社に勤める男が主人公。煩わしい人間関係を避けるためにタクシー運転手という職を選んだはずが、やがて会社の方針という名の欺瞞に飲み込まれ、濡れ衣を着せられてしまいます。男の運命は、破滅かそれとも……。
「僕たちは人間をやるのが下手なのではないか」という“問い”に挑んだ本書は、現代人が抱える自己嫌悪と違和感の正体へと迫り、哲夫自らが「10冊目にして集大成」と自賛する傑作です。
この日の司会を務めた担当編集者から、発売翌日にして重版決定したことが発表されると、会場から祝福の拍手が起こります。哲夫は恐縮した様子で「10冊目になるんですけど、こんなにすぐに重版なんてなかったので、ありがたいです。皆さんのお陰です」と感謝しました。

今作は、「人が死を乗り越えるための本」というオーダーを受けて執筆し始めたそうです。最終的にできあがったのは理不尽な社会に対するタクシー運転手の葛藤の物語。「“死”というテーマがこの物語に着地した理由は?」という質問に、哲夫は次のように答えました。
「“死の苦しみ”を乗り越えすぎて、死にやすくしてしまうのはどうかと思い、それは避けたいなと思いました。僕自身、自殺者をゼロにしたいとずっと願っている人間ですが、電車に乗っていたりすると、朝も夜も心ない声を聞いたりします。『誰やねん! また飛び込みやがって』と。
命を絶つ人が1人でも少なくなり、いずれまったくいなくなる世の中が理想だと思うので、苦しみを乗り越え、かつみんなが『生きたい』『天寿を全うしたい』と思える本になればいいなという思いで書かせていただきました」
意味深なタイトルの意味は……?
「“生きづらさ”を徹底的に描いた理由は?」という質問に対しては、仏教用語を引き合いに出しながら、こう説明します。
「生きていたら苦しいことがいっぱいあるよというのを、仏教では『一切皆苦(いっさいかいく)』といいます。いろいろな苦しみがあるなかで、仏教がいちばん大きな苦しみとしているのが『四苦』と呼ばれる『生・老・病・死』。
さらに、愛する人と別れてしまう『愛別離苦(あいべつりく)』、欲しいものが手に入らない『求不得苦(ぐふとくく)』、イヤな人とばかり会ってしまう『怨憎会苦(おんぞうえく)』、心のままに体が動いていかない『五蘊盛苦(ごうんじょうく)』の四つの苦しみを合わせて『四苦八苦』という言葉があります。それくらい、生きていると苦しいことがあるんです。
その苦しみに直面して、人間は精神の状態を崩したり、ストレスを感じたりしますよね。そのストレスを感じない方法を模索したり、苦しみの果てに死に行き着いてしまうという悲しいことがなくなるように、というテイストも入れさせてもらいました」
『頭を木魚に』というタイトルについて問われると、哲夫は「全部は言えないんですけど……」と、“ネタバレ”にもなりかねないため苦悶の表情を浮かべ、次のように明かしました。
「『頭に木魚』という言葉から、直接的なイメージや、比喩的な表現など、いろいろ想像をされると思うんですけど、全部正解になりそうな気もしたんです。さまざまな意味合いを『頭を木魚に』という言葉に集約できると思ったので、このタイトルにしました」
