(3)ネタバレしない
一億総フォトグラファー時代、どんな場所も、どんな催しも、簡単にインターネットを通じて疑似体験ができる。「現地でしかわからないことがある」とは思いつつも、動画や画像が放つインパクトは、私たちメディアが誰よりも知るところだ。
しかしジブリパークの多くの展示は室内撮影禁止なので、どんな部屋があるか、どんなものが見られるか、公式発信以外の前情報がほとんどない状態で現地へ行く。
いわばネタバレなしで現物に直面するので、出会ったものひとつひとつに新鮮な驚きがある。特に実感したのが「ハウルの城」だ。明るい屋外から薄暗い城内に入ったときのヒヤリとした空気感。目が慣れてくると、作中そのままの雑然とした生活用具や魔法小物の物量に圧倒される。
触ることのできないエリアだが、小物、音、光、動きで緻密に再現されたハウルの寝室は必見だ。アニメーションという二次元でしか見たことのなかったものが、重量感や質感をともなって目の前にあることに感動してしまう。
ジブリパークには特殊効果満載のライドアトラクションがあるわけでも、きらびやかなショーがあるわけでもない。しかし「空間づくり」へのこだわりや、造り込みのすさまじさは世界規模のテーマパークをしのぐと思う。
・SNS発信を前提とする現代型テーマパークの功罪
テーマパークの役割は、用意された演出を楽しむ「世界観にひたる場」から、SNSを中心とした「発信の場」へと変化している。テーマパーク側でも、時代に合わせて運営方針をアップデートしているはずだ。
かつてディズニーリゾートで行われていた大晦日のカウントダウンイベントに毎年参加していた筆者。ある頃から急速に潮目が変わったのを感じた。
それまではチケット入手こそ少し苦労するものの、インパークさえしてしまえば、ショー鑑賞、限定メニューの飲食、お正月アイテム購入など、特に攻略プランなどなくても一通りのイベントを楽しむことができた。それぞれの入園者のやりたいことが、適度に分散していたのだと思う。もちろん行列はあったが、並びさえすれば目的は達せられるので、先を争うものでもなかった。
ところが、ある年から様子が変わった。入園直後にもかかわらずお正月アイテムの棚はからっぽ、特別メニューは軒並み完売、イベント鑑賞はキャストが声を張り上げて場所取りの人々を整理するような険しい空気。
おそらく「自らの体験を発信する」というSNS文化や、転売で利益を得るビジネスが始まった時期なのだと思う。やりたいこと、欲しいもの、食べたいものを手に入れるには、努力して勝ち抜かなければならない、という世界線が生まれた。
それはテーマパーク側にとっても悪いことではなくて、SNSで拡散されたり、グッズの希少性が高まったりするのは、ファンの熱量の裏返しだ。そのため現在のテーマパークは「参加型・発信型体験」を前提に設計されているとされる。
ジブリパークは、写真を撮って楽しむ場所/写真なしの五感で体験する場所を、明確に区分している。写真OKの「ジブリのなりきり名場面展」は開園から長蛇の列で、これもまた楽しそうだった。写真を撮りたい人も、興味がない人も、どちらも否定しない理想的な棲み分けではないだろうか。
執筆・イラスト:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
