「ごめんね」と口にするまで
席替えで私は彼女の隣に座り、「すごいね、見違えた」と話しかけました。「ありがとう」と彼女は穏やかに返してくれました。私は自分の話を始めました。結婚して子どもがいること、最近パートを始めたこと。
話しているうちに、自分が当時の話題を避けていることに気づきました。覚悟を決めて顔を上げ聞きました。「高3の時の文化祭のあれ、覚えてる?」。彼女は迷わず「覚えてる」と答えました。私は頭を下げて言いました。「ごめんね、あの時の私、何も考えずに言ってたんだと思う」。
そして...
帰宅後、子どもを寝かしつけたあと、私はキッチンの椅子に座り込んでいました。10年前、軽く投げた一言を彼女がずっと覚えていたこと。それを覚えていなかった自分のほうが、ずっと罪深いのかもしれない。翌朝、彼女から短いメッセージが届きました。「昨日はありがとう。元気でいてね」。怒りも嫌味もない、淡々とした文面でした。返信を打とうとして、何度も書きかけては消しました。簡単に許してもらえるはずがないことだけは、ようやくわかった気がします。
(20代女性・パート事務)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
