“第3の居場所”が育つとき
地元の農家ダルあきたアグリサポートスポンサー企業の協力のもと、枝豆収穫体験を実施。収穫した新鮮な枝豆は「みんなのテーブル」で提供された常設で続けるには、当然お金がかかる。だが運営会社は株式会社であり、NPOや社会福祉法人に比べると助成金の対象外になりやすいのも事実だ。
その中で軸になるのは、地元企業からの協賛金と食材寄付だ。
「我々の活動にご理解いただいて継続的に支えていただく協賛金があります。“自社ではできないから、代わりにやってほしい”と真摯に思いを伝えてくださることもあります。そういった熱意を無駄にしないように、というのがまず原則としてあります」
「みんなのテーブル」の料理の一例。食材の品質はどれも高く味も良いと評判だ食材寄付も、規格外の野菜や肉に限らない。スポンサー企業から“店頭に並ぶ品質の肉”を毎月提供してもらう例もあるという。寄付は「無理なく」が原則。長く地元企業と続けていくために、共通の思いを軸に信頼を積み上げていく。
収益面では「会社として許容できる範囲内」での持ち出しもあり、現状は赤字。それでも続けられているのは、現場で確かな変化が見えていることも大きい。
「設立から4年半経ちましたが、変化だらけです。食育で言うと、家だと残すけどここだと食べてくれる、嫌いなものが食べられるようになった、料理に興味を持ったとか。良い反響をいただいています。あと、お兄さんやお姉さんに言われたら勉強する子も多いようで、そのためにここに来るという子もいます(笑)」
さらに大きな変化は、親同士のつながりだ。ひとり親の場合、家での孤食や外食回数も少なくなる中、周囲との連携も希薄になりがちだ。親が「話す相手」を得ることは、孤立の予防にもつながる。
「親御さん同士の交流が増えました、話し相手ができて、地域のコミュニケーションが広がっていくことはとても大事だと思っています」
今後の展望として小原さんが挙げるのは、「スポーツチームらしさ」をもっと出すこと。2店舗目となる「秋田ノーザンゲートスクエア店」が2025年10月に開店した。その理由の一つは、選手が関われる導線をより強くするためだった。
「当初想定したよりも選手の交流は現状できていない。2店舗目はチームのホームアリーナ練習場に隣接している場所。より来店される方と選手との関わりを生むことになればと考えています」
さらに近年、小原さんたち秋田ノーザンハピネッツは「こども食堂のリブランディング」にも着手している。日本財団の助成を受け、秋田県内25市町村を訪問しながら、子どもの居場所づくりと機会格差を是正していくプロジェクトだ。
キッチンカーとプレーカー機能(遊び・運動)を兼ね備えた「プレイキッチンカー」で、「移動する居場所」を届けている。
単に食事を提供するだけではない。選手やスタッフが一緒に体を動かし、鬼ごっこをし、遊び道具を持ち込む。「まずは遊ぶ」ことから始め、そのあとに食卓を囲む。
「こども食堂は、“困っている人が行く場所”というイメージがあると思います。でも、楽しい場所、みんなで集まる場所なんだよ、ということを体験で伝えていきたい」と小原さんは話す。
「みんなのテーブル」では、子どもたちの笑顔があふれている「プレイキッチンカー」では、各市町村にあるこども食堂を運営する団体への協力や支援に回り、こども食堂がまだない地域では行政と連携しながら、モデルを共有する。秋田ノーザンハピネッツが前面に出ることが目的ではない。明るく楽しいイメージへの変化をもたらすために“エンタメ”として使ってもらう。
「将来的には複合的な支援モデルを確立して、BリーグやJリーグなどの他地域のプロスポーツチームにも、必要性のある地域には導入をしていただき普及することを目指しています」
改めてスポーツチームが地域に関わる意味を尋ねると、小原さんはこう話す。
「県民球団として、より愛されるクラブを目指していく中で、『みんなのテーブル』のように日常の中で関われる場所を持つことに意味があると思っています」
勝敗の外側にある場所が、クラブの“使命”と結びつくとき、地域との距離は確実に縮まる。
もし自分のまちに、応援しているチームがあったら。試合の日だけではなく、日常でも顔を合わせられたら――。「みんなのテーブル」は、その問いに対する一つの答えを、常設のこども食堂として提示している。
text by Akihiro Ichiyanagi(Parasapo Lab)
写真提供:秋田ノーザンハピネッツ
