本当は二枚、取ってあった
彼女が傷ついた顔をしていたのは、わかっていました。前にも一度、彼女の大好きな映画を二人で観たとき、僕は内容についていけず、上の空になってしまったことがあります。あのときの寂しそうな横顔を、もう二度と見たくなかった。だから今度こそ、ちゃんと予習して、彼女の隣で同じ場面に心を動かしたかったのです。
実を言えば、公開初日のチケットは、二枚きちんと取ってありました。彼女と並んで観るための席です。それを伝えればよかったのに、格好をつけたい気持ちが、最後まで邪魔をしてしまいました。
そして...
彼女に伝えたいことが、ようやく整理できました。僕は予習なんて遠回りをしなくても、本当はただ、隣で同じものを好きになりたかっただけなのだと思います。次に会えたら、まず謝ろうと決めています。
一枚だけのチケットの理由も、二枚取ってある初日の席のことも、格好つけずに全部話すつもりです。彼女が大好きなものを、今度こそ僕も好きになれるように。二人分の席で、同じ場面に笑ったり驚いたりできる、その日が待ち遠しくてなりません。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
