脳内の本棚
真堂 今回のエッセイは、テーマが毎回ちがうから、読んでいて、須賀さんの心の中とか、脳内の本棚が想像できました。いろんなトリビアがつまっていて、なんだか得した気分がします。たとえば、カラー診断のところの「イエベ」「ブルべ」とか恥ずかしながら初めて知りました。友達に聞いたら周回遅れかって笑われましたよ(笑)。クラシックの指揮者の回も、私はそれまではただ音楽を聴いているだけだったのですが、歴史的な話をはさんでくださるので面白かったです。須賀さんの好きな野球にたとえると、どれだけ球種持っているの、っていう感じ。軽い調子で書かれていますけど、須賀さんらしい知識と体験と思考の積み重ねがしっかりある。持っている世界のそれぞれ入り口になっている感じがしました。私もフラメンコのタブラオに連れてってくれないかなと思いましたよ。
須賀 是非是非、行きましょう!
真堂 私、中1の頃、1年ほどバレーボールをかじったくらいでスポーツは全く苦手なんですけど、春の選抜高校野球も見てみたいなと思いました。春と夏ってちがうんだって初めて知って。
須賀 この本が、いろんな世界の入り口になっていると言われると嬉しいです。私がコバルトで書いていた分野ってミリタリーとか野球とか、一般の女子には受け入れがたい趣味が多かったので。小説もそうなんですが、このエッセイで一人でも同志が増えたらいいなと思いつつ書いていたところがありますね。
真堂 私もしっかりしなきゃ、知識欲のスイッチ切れてないか、と反省しました。須賀さんに何か教えてもらいたいですよ、フラメンコとか……。
須賀 ダンスは良いですよ。踊って発散してスッキリしたらネタが浮かんだりとかして。近頃とくに体力に余剰がないと創作って難しいなって思います。だって脳って体の一番上に乗っかっているから、パワーがないとアンテナが動きませんし。
真堂 小学生の頃の須賀さんが『三国志』に夢中になっていた話も姿が想像できて面白かったです。それにしても、小学生で吉川(よしかわ)英治(えいじ)はすごい読解力ですよ。普通じゃない(笑)。
須賀 そんなことないって(笑)。でも当時の経験から、本当に読みたい話がないなら自分で書くしかないと思うようになって、それが作家を目指したきっかけだったかも……。
真堂 私は、友達に誘われてコバルト・ノベル大賞に作品を投稿することにしたんですけど、受賞作を書き終えたとき、なんて幸せなんだろう、作家ってこんなことできるんだと分かって……。たぶん、完全に自分好みの世界を作り上げたからなんでしょうけど、その快感をずっと求めている感じですね。
埼玉自慢
真堂 須賀さんとの共通点に、埼玉があるんですよね。私は生まれたのは新宿なんですけど、10年ほど前に埼玉県熊谷(くまがや)市に引っ越して。今回、エッセイに出てくるから映画『翔んで埼玉』を観たらオープニングが熊谷なんですよ。誇らしいような恥ずかしいような変な気持ちになって。あ、私も立派な埼玉県民になりつつあるなと思いました(笑)。
須賀 たぶん埼玉で一番有名なのは私の地元名物の草加(そうか)せんべい(笑)。私は好きですけど、ガチで硬いから、一般的にはもらっても嬉しくないかなぁ……。
真堂 熊谷の名産ってなんだろう?
須賀 やっぱり暑さじゃないですか。(地元のデパート)八木橋(やぎはし)の温度計が毎年熱い戦いを繰り広げているじゃないですか。日本一の記録、残念ながら破られたけど。県民としては日本一でいて欲しいから、もっと暑くなってよって応援していますよ。
真堂 熊谷の暑さって質が違うんですよね。その前にいた練馬も暑かったんですけど、熊谷は並木が見当たらなくて、日光を遮るものがない。
須賀 でも埼玉は住むには結構いい所でしょ。今回の表紙のイラストは、コバルト時代からのおつき合いの梶原(かじわら)にきさんに描いていただいたんですけど、草加せんべいを持って、春日部(かすかべ)特産の麦わら帽子をかぶっています。
真堂 県鳥のシラコバトの絵も中に出てきていますよね。

