“女性版[有町1.1]シゲさん”寺田くるみと、十和&桔平の“絶妙な距離感”――File 2の注目ポイント
――公開されたFile 1では、1話で『パトレイバー』の王道ともいえるレイバー犯罪への対処をSNSを絡めた形で描き、2話では妄想ではありましたがレイバー戦が描かれ、3話は映画撮影のお話と、バラエティ豊かなエピソードを楽しませていただきました。File 2の公開も楽しみですが、File 2で注目してほしいキャラクターは誰ですか?
出渕:整備班の寺田くるみですかね。くるみって、要するに『EZY』版の斯波繁夫なんですよ。女性版のシゲさん(笑)。キャラのポジションとしては、とても使いやすいし、とても膨らませやすい。くるみが使いやすいキャラになった一方で班長の齋藤陽一は埋没していっちゃったんですけどね。班長なんだけど、そんなに目立たない班長みたいな(笑)。
―― File 2で気になることといえば、十和と桔平の関係性も気になります。File 1では野明と遊馬のように「フォワードとバックアップは一心同体」と言えるほどの関係性は感じられませんでしたが、物語を追っていくうちに、二人の関係性も変化して行くのでしょうか?
出渕:変化していくと思いますよ。変化したように見えて、また元に戻っているような気もしますが(笑)。
File 2ではちゃんと二人の関係性も描かれます。第6話『恋のサバイバル』は、ある意味で(NEW OVA第12話)『二人の軽井沢』みたいな感じですからね。いや、『二人の軽井沢』とストーリーそのものは全然違うんですよ。違うんだけど、孤立した二人になっちゃって、雨が降って……って、雨も同じか。台風じゃないんですけれど、二人でなんとかしなきゃいけないというところで、お互いの過去が描かれます。なんていうんですかね、絶妙な距離感みたいなものが、面白く描かれていると思うので、楽しみにしていてください。
『バビロンプロジェクト』はどうなった? 『EZY』における世界設定の裏側
――続いて、設定についてお聞かせください。1980年代後半に、当時から見ての近未来である1998年を描いて、『EZY』では2030年代を描いていますが、2030年代の『パトレイバー』の世界を描くにあたって、大切にしたポイントはありますか?
出渕:常に近未来――10年後、今回は7年後ぐらいか――を描くと言っても、基本は現代なんですよね。下手な未来予測をすると、すぐに現実に追いつかれちゃうんです。『EZY』の企画が動きはじめた時、伊藤さんから「AIをテーマにしようか」という話が出たこともあったんですよ。今になって思うと「やらなくてよかったな」と。当時の予想で下手にAIを犯罪に絡めて何かやっていたら、2026年の今よりも古いAIの描き方になっていたと思うんです。
――劇場版1作目の頃だと、あの当時、OSの話は最先端でしたし、数年後にPCが身近なものになって、OSも身近な存在となり、間違いなく近未来が描かれていたと思います。
出渕:当時はテクノロジーの進化も現在ほど早くなかったし、劇場版の1作目は1年で作っていましたから、リアルタイムで最新の話題を描けたというのもありますね。
――設定についてもう少しお聞かせください。旧作ではレイバーが存在する理由として「ハイパーテクノロジーの急速な発展」とともに、東京を襲った直下地震からの復興と、東京湾に大堤防を建設する『バビロンプロジェクト』により、レイバーが普及したという設定が存在しましたが、2030年代の世界で『バビロンプロジェクト』はどうなっているのでしょうか? すでに完遂されているのでしょうか?
出渕:『バビロンプロジェクト』は実は「完成させちゃいけないプロジェクト」なんですよ。東京湾を干拓するわけですからね。生態系もおかしくなるだろうし。『バビロンプロジェクト』というのは、レイバーが存在する未来を描く方便だったんですよ。劇場版1作目の時には方便として使いながら根幹にも関わってくる、いい形で機能したんですけれどね。
劇場版2作目になると押井さんは『バビロンプロジェクト』なんて一言も言わないどころか、上空から東京湾を眺めたときに、その痕跡も一切ないんですよ。押井さんとしては、「そういうものは忘れる」ということなんでしょうね。でも、設定としてはあるわけだからしょうがない。だから僕は『バビロンプロジェクト』は、頓挫したと思っています。途中で頓挫したか縮小して、「環境に優しいプロジェクトに変えよう」となったけど、結局は無理で名残だけ残っているといった感じでしょうか。
