財閥系とは思えない社風を窺わせる投稿がずらり
三井や三菱と並ぶ三大財閥として知られる住友だが、不動産業界における立ち位置は三井・三菱とは少し異なる。
三井不動産や三菱地所がそれぞれの財閥で中核企業として振る舞う一方、住友不動産は戦後の財閥解体後に誕生したため財閥内でも傍流であり、日本橋や丸の内のような「ホームグラウンド」を持たない。
現在、都心の一等地に建つ住友不動産のビルのほとんどが、同社の社員が靴底をすり減らして土地を買い上げ、開発してきたものだ。「うちは三井や三菱と違って、会社に座ってるだけで給料を貰う社員はいない」と同社の社員は公然と話す。
そうした精神は子会社である住友不動産ステップにも引き継がれている。徹底した実力主義をかかげる同社は給料に占める歩合の比率が高く、契約さえ取れればインセンティブにより若手社員でも年収2000万円を稼げるし、逆に40歳、50歳になっても成果が出せなければ給料は上がらない。
企業の口コミサイトであるオープンワークを開くと、「ひたすら営業成績を求められる」「ノルマ意識が強い」「実力主義」といった、財閥系とは思えない社風を窺わせる投稿がずらりと並ぶ。
「インセンティブの負の側面が無視できなくなったのでは」
もっとも、厳しい環境がゆえに、年功序列でぬるま湯を狙うのではなく、「個人の力」で稼ぐ姿勢が最大の強みとなっていたのも事実だ。
数字をあげるためにテレアポやチラシのような泥臭い営業も厭わず、長時間働く社員は同業他社からも畏敬の念で見られていた。
しかし、今回の事件を機に、グループの最大の特徴である歩合を減らすとなれば、前提が大きく崩れることになる。
前述のA氏は「どこまで歩合の比率を減らすかは分からないが、インセンティブの負の側面が無視できなくなったのでは」と分析する。ここでいう負の側面とは、今回発覚した犯罪行為に直結するような行為だけでない。
一般的に、不動産仲介会社は仲介手数料が最大の収益源となる。400万円以上の物件の場合、仲介手数料は「成約価格の3%に6万円を足した数字」が上限となっており、物件価格が7000万円のマンションの場合、216万円となる。
しかし、売主も買主も自分で見つけた場合、2倍で432万円まで引き上げることができるのだ。
不動産業界ではこうした取引を「両手取引」と呼ぶ。
売り手も買い手も自分で見つけてくる人が正当な対価を得るという意味で、両手取引自体は悪いことではない。しかし、両手取引を実現するために、他社経由の買い手を拒絶する「囲い込み」を実施しているとなれば話は別だ。
売主からすれば、売りに出している物件を購入してくれる可能性を知らないところで握りつぶされることになるからだ。しかし、歩合制の会社の場合、自らのインセンティブを達成するために、こうした取引が発生しやすい。
ダイヤモンド不動産研究所が24年に公開した情報によると、住友不動産ステップ(旧住友不動産販売)の両手取引比率は50.9%と、競合の三井不動産リアルティグループ(38.42%)や東急リバブル(32.61%)と比べても明らかに高い。
もちろん、歩合のために社員一人一人が努力したという側面もあるのだろうが、X(旧Twitter)上では、同社の囲い込みを疑うような投稿も頻繁にみられた。国土交通省は25年、宅地建物取引業法を改正し、囲い込みが発覚した場合、是正の指示処分の対象とするとしている。

