いつもの誘い文句
俺にとって、マッチングアプリは数をこなすゲームのようなものでした。プロフィールに目を通したら、あとは決まった流れに乗せるだけです。
俺:「はじめまして。俺、自分で会社をやってるんだ」
相手:「はじめまして。すごいですね」
俺:「まあね。プロフィール見たけど、君は普通の会社員かな。今度、いい店に連れてってあげるよ。ちゃんとした店、行ったことなさそうだし」
本当は会社など経営していません。けれど経営者だと伝えると、相手の反応が柔らかくなるのを何度も見てきました。少し見下すくらいがちょうどいい。そう考えて、俺はいつも同じ言葉を並べていたのです。
はぐらかしていた本当の理由
やりとりが進むと、俺はますます調子に乗っていきました。
俺:「店は俺が予約するから。もちろん全部奢るよ。経営者だからそのくらい余裕」
相手:「ありがとうございます」
俺:「会社って言っても何の会社か気になるでしょ?まあ会ってからのお楽しみってことで」
会社の中身を聞かれても、俺は具体的に答えられません。語れる事業などないからです。はぐらかすのが癖になっていました。それでも相手は丁寧な返事を続けてくれて、俺はこの相手も簡単だと決めつけていたのです。
