これは「見かけの繁栄」である
私はこれを以前から「見かけの繁栄」と呼んできた。円安による税収増は禁断の果実である。食べた瞬間は甘い。しかし、その副作用は確実にやって来る。そして今、その副作用が企業現場で始まっているのである。
私は以前から違和感を覚えている。高市総理は円安容認姿勢を崩さず、利上げにも慎重な姿勢を示してきた。片山財務大臣もまた家計支援や景気対策を重視する発言を繰り返している。
確かに政治としては理解できる。しかし、その結果として何が起きているかも見なければならない。円の価値は大きく下落した。輸入物価は上昇した。企業は価格転嫁を迫られた。国民生活は苦しくなった。それでもなお、ガソリン補助金を赤字国債まで発行して延長し続ける。
私はここに強い違和感を覚える。興味深いのは、高市総理自身が最近の発信の中で、ガソリン補助金によって消費者物価指数を1.1ポイント程度押し下げていると説明している点である。
問題が起きれば補助金、値上がりすれば補助金
これは裏を返せば、補助金がなければ依然として強い物価上昇圧力が残っていることを政府自ら認めていることでもあるのだ。
確かにその場の痛みを和らげることはできる。しかし問題そのものは何一つ解決していないのである。むしろ円安によって生じた痛みを、更なる借金で先送りしているように見える。
私はこの発想そのものがデフレ脳だと思っている。問題が起きれば補助金。値上がりすれば補助金。負担が増えれば補助金。しかし、それは問題を解決しているのではない。問題を先送りしているだけなのである。
その昔、第一次オイルショックが発生した時、日本政府は国民に節約を呼びかけた。企業も知恵を絞った。そして、その結果として低燃費車という日本の強みが生まれた。
ホンダシビックは世界を席巻した。危機を補助金で乗り切ったのではない。危機を技術革新と努力で乗り切ったのである。
一方、今の日本はどうか。節約を呼びかけるどころか、補助金で現状維持を続けようとしている。しかし、その先に何があるのか。私はむしろ、こちらのほうが心配なのである。
長野北部では地震が続いている。東北でも地震が続いている。異常気象も激しさを増している。日本は阪神大震災を経験した。東日本大震災も経験した。熊本地震も経験した。能登半島地震も経験した。そして、つい先日も海外で発生した大地震により、日本でも津波注意報が発令されたばかりである。

