やっぱり映画が好き
池ノ辺 これまでの30年間の経験で、失敗したことなんてありますか。
仁村 もちろんあります (笑)。字幕の原稿を作る時、私はパソコンでデータ化するんですけど、記号とか漢字とかが、JISやUnicodeの文字コードで入力されていると、バージョンによっては見えなかったり、対応していなかったりするんです。それで実際焼き上がった初号を見ると、文字化けしたのか変な見覚えのない記号が入っている。こういうところも確認しなきゃいけなかったんだ、ということがありました。
池ノ辺 それでどうしたんですか。
仁村 プリントを差し替えました。その時は今みたいに1年に一度あるかないかじゃなくてその作業が普通にやっている作業の一つという時のことです。
池ノ辺 早川さんはどうですか。
早川 昔、働き始めた頃、巻いてあるフィルムのコアをズボッと抜いてしまったことがあります。
池ノ辺 ああ、私もあります。あれ、大変なんですよね。しかも時間のない時に限ってやっちゃって、そこで無駄な時間が取られて。
早川 そうなんです。手で巻き直すんですけど、外側は締まっているのに中がしっかり巻けなくて。
池ノ辺 30年ずっとこのお仕事を続けてこられたわけですが、今の思いとしてはいかがですか。
仁村 楽しい仕事をさせてもらっているなと思っています。
池ノ辺 フィルムという映画そのものを目の前にして肌で触れて、みんなが観る前の作業をしてるわけですからね。
仁村 今もそうですけど、一番最初に字幕の原稿をもらって一番最初に原稿を載せたものを見てるんだ、と思いますよね。あとは、いろんなタイプの映画の仕事が来るので、時には自分があまり好きじゃないジャンルの映画も来るわけですよ。
池ノ辺 ホラーとか?
仁村 そうなんです (笑)。私はホラーが苦手で、自分だったら観に行こうとは思わない。そういう映画でも仕事として来たのを観ると意外に良かったなと思うこともあります。そういう時は、あらためてこの会社に入っていて良かったと思いますね。
池ノ辺 早川さんはいかがですか。
早川 もちろん今言われたようなこともありますが、フィルムに関していえば、どういう作業をしても傷をつけるリスクがあるので、そこはかなり気を遣いながら作業しています。それでもフィルムに触るというのは誰でもできることではないので、そこは貴重な経験をさせてもらっていると思います。ただ、1コマ1コマが小さいので、最近はその小ささがちょっと辛くなってきました (笑)。
池ノ辺 そうですよね、今本当に日本でお二人だけができる仕事と言えますよね。シネアーツさんなしにはフィルムは立ち行かないと思うので、機材も職人さんもこれからもよろしくお願いします。今の主流はデジタルですけど、やっぱり35ミリの奥行き感だとかあたたかみだとか、そこがいいという若い監督さんたちが、これからも出てくると思います。そしてぜひ、劇場でフィルム上映をたくさんの人に体感してもらいたいです。本日は、貴重な機会をいただき本当にありがとうございました。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理
1951年に映画フィルムの字幕制作会社として設立。タイプ方式、ケミカル方式、レーザー方式といった字幕加工業務を経て、現在はデジタルシネマ関連や貸し試写室業務等を行っている。
https://www.cinearts.co.jp/company.html
映画『アン・リー/はじまりの物語』
18世紀のイギリス、貧しい鍛治職人の家に生まれたアンは信仰心の厚い女性として育つ。4人の子供を授かるも、全てを幼くして失うという悲痛な体験の中、自らが“キリストの女性の姿の生まれ変わり”である、確信的な啓示を得る。彼女の性別、人種の平等を説く生き方は多くの人々を惹きつけていくのだったが、反感や警戒を感じる勢力から苛烈な迫害を受けていく。わずか8人の信徒とともにアメリカに渡り、性別、人種の平等信仰をもとにした理想の生活を実現するユートピアを求めるのだったが、そこでも大いなる困難が待ち構えていたのだった。
監督:モナ・ファストヴォールド
出演:アマンダ・セイフライド、ルイス・プルマン、トーマシン・マッケンジーほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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公開中
※35mmフィルム上映は、109シネマズプレミアム新宿、立川シネマシティ、八丁座の3劇場にて限定公開中。詳しくは各劇場HPをご確認ください。
公式サイト annlee
