既読だけがついて、返信は来ない
「もう駅着いたよ」。そう送ったメッセージに、既読があっという間につきました。だからすぐに「今向かってる」とでも返ってくるものだと思っていました。
ところが、五分経っても、十分経っても、画面は既読がついたまま返信がきません。支度に手間取っているのかもしれない、電車が遅れているのかもしれない。そう考えながら、私は柱の前を行ったり来たりしていました。
三十分後、彼のものではない言葉が届いた
通知が光ったのは、それから三十分ほど経ったころでした。表示されたのは、いつもの彼のアカウントの名前。やっと返事が来た、と画面を開いて、私は柱にもたれたまま文章を何度も読み返しました。「突然ごめんなさい。これを打っているのは、あなたが待っている人ではありません」。続けて、もう一通。「私、その人の同棲相手です」。彼の口調とはまるで違う、知らない人の文字でした。彼のスマホから、彼ではない誰かが、私に返信していたのです。
