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「高市さんは本当は中道だと思っています。そこが出発点ですから」94年に政策集団「リベラルズ」に加わった高市議員の当時の思惑と、リクルート事件が壊した自民党の「55年体制」

「高市さんは本当は中道だと思っています。そこが出発点ですから」94年に政策集団「リベラルズ」に加わった高市議員の当時の思惑と、リクルート事件が壊した自民党の「55年体制」

高市早苗政権に陰りが見え始めた。ネガティブキャンペーン疑惑や物価高の対策に追われるなか、自民党内では「ポスト高市」をめぐる思惑も交錯する。その光景は、リクルート事件後に短命政権が続き、政界再編へと雪崩れ込んだ平成初頭とどこか重なる。宇野宗佑、海部俊樹、細川護熙、羽田孜――。相次ぐ政権交代と自民党の変質の過程をたどりながら、高市早苗という政治家の意外な原点を探る。

高市政権を覆う「ネガキャン疑惑」

短命内閣に終わるか、長期政権を築けるか――高市早苗にとっては、今がその境かもしれない。

大きな壁の一つが選挙の動画問題だ。

高市陣営は昨年秋の自民党総裁選と今年2月の衆議院議員選挙で政策秘書が動画作成業者と打ち合わせたうえで、敵対候補を貶めるネガキャン(ネガティブキャンペーン)を繰り返してきたという。

そう告発する動画作成業者の松井健に対し、高市事務所の政策秘書の木下剛志は松井と面識すらないと言い張ってきた。告発を報じた週刊文春側は早くからLINEやメールのやりとりを公表し、さらにオンラインで打ち合わせしていたZoom音声まで持ちだした。

防戦一方に見える高市本人は国会答弁がコロコロ変わり、秘書の音声には違和感があると言い訳した挙句、オンラインでの打ち合わせを認めた。かと思えば、告発者の一部動画偽造まで飛び出し、レベルの低い争いを演じている。

もとより高市にとって頭痛のタネは、それだけではない。通常国会の終盤に差し掛かり、物価高対策をはじめ安保・防衛に関する政策の馬脚が見え隠れしてきた。この先、国民が期待値の高かった高市政権をどう評価するか。そこが大きな焦点だ。

先の総選挙で圧倒的な衆議院の議席を手にした高市政権において、あからさまに批判する自民党議員は数少ない。閣内にいる自民党中枢幹部たちも政権の危うさを感じていながら、表向き閣内や党内の不一致を避け、これからも政権を支えると言い続ける。

ポスト高市と目される実力者たちはひょっとすると首相の墜落を待っているのではないか、とも囁かれる。彼らの高市政権に対する高い評価は本音と思えないだけに、政権内に薄気味悪い空気が流れている。

ポスト高市は動き始めているのか

そんな自民党内でポスト高市に最も近い人物とされる政務調査会長の小林鷹之に会った。なんとなく疲れているようにも感じた。

「疲れてはいません。ひたすら物事に追われるのでエネルギーは使いますけれど、大丈夫ですよ」

笑顔をつくる小林にストレートに高市の政策について尋ねた。たとえば5月に立ち上がった高市政策支援グループ「国力研究会」は麻生太郎、茂木敏充、加藤勝信、西村康稔、萩生田光一、小泉進次郎、小林鷹之、中曽根弘文、松山政司、有村治子、山谷えり子の11議員が発起人となり、417人いる自民党国会議員の8割が集う。小林自身、発起人になっている。どのような経緯があったのか。

「国力研究会の事務局長に就任された山田宏参議院議員が3月頃、ここ(政調会長室)にいらっしゃって『今回高市政権の政策をバックアップしていく国力研究会を立ち上げることになったので、発起人になってほしい』と伝えられたのです。

私自身、党として高市政権の政策を推進している立場ですから、発起人を快諾いたしました。けれど、どのようにしてメンバーを集めていたのか、詳細は知らないんです。加藤さんが会長で、萩生田さんが幹事長になっていますが、そうした人選についても私はぜんぜん存じあげません。

山田さんからは他の発起人として麻生副総裁と茂木外務大臣、萩生田さんの名前をうかがいましたけれど、それ以外の方の記憶はありません。

そもそも国力研究会は単なる勉強会で、取り沙汰されているような政治戦略的な集団とは見ていません。自民党の政務調査会が中心になって高市政権の柱となる政策を後押しする議員連盟みたいな位置付けでしょうか。それはありがたい話なので参加したに過ぎません」

まるで他人事のような言いぶりなのだ。もっとも国力研究会の発起人には重量級の岸田文雄や林芳正などの名前がない。彼らを外したのは、会の中心人物である麻生の指図だともいわれる。

国力研究会は自民党の8割が参加するオール自民の集まりといわれ、高市政権の一大政策集団をつくる動きではないか、と指摘されている。反面、石破茂や村上誠一郎といったいわゆる高市政権から外されている議員たちは参加してない。

また独自に旧二階派の議員に声をかけて勉強会を立ち上げた武田良太は、駆け込みで会に加わっている。それはポスト高市を睨んで政権の動きをけん制しようとする抱き着き作戦ではないか、ともいわれた。

こうした政界の声は気にならないか、と問うたが、小林は優等生回答を繰り返すばかりだ。

「この間、いろいろな報道に接してきましたが、そういうのは気にはしていません。結果として会の人数が多くなりましたから、オール自民とか抱き着き集団なんていわれますけれど、そうではありません。

たとえば議員連盟は国ごとのそれがあったり、政策ごとにつくられたり、無数にあります。そこに入る入らないは本人の判断なので、それ以上でもそれ以下でもありません。

私には党の政務調査会長という立場があるので、とにかく責任を持って政策を進めなければならないと思っているだけです」

もっともポスト高市を含め、政権周辺ではさまざまに取り沙汰されてきた。会員制情報誌『選択』4月号の特集記事『高市が「退陣」を口にした夜』などはその一つに違いない。

記事では、高市がホルムズ海峡の自衛隊派兵を巡って内閣官房参与の今井尚哉とやり合い、それ以来、今井が高市と距離を置くようになったと書く。そこでは小林のことにも触れている。

〈自衛隊派遣に執着する高市に、正面から反発したのは自民党政調会長・小林鷹之だった。政府・与党の連絡会議の席上、安保法制の基準が揺らぐことの非を鳴らした。会議は気まずく短時間で終わり、自らの政調会長人事を悔いている様子の高市に、幹事長の鈴木俊一が「彼には将来がある」と取りなしたほどだ〉

記事にあるように高市と距離を置き始めているのか。記事を読んだ感想は?

「今井さんのことは存じあげません。もともと記事を読んでいたわけじゃないですけれど、メディアを含め関係者から問い合わせがあったので読みました。

よくこういう面白い記事をつくられるなっていうのが率直なところです。私のことだけじゃなく、自民党本部と官邸に隙間風が吹いているような記事が最近目立つんですけれど、そんなことはまったくありません。

『選択』には、たしか私と高市総理が政府与党連絡会議でぶつかり、その後、鈴木幹事長が取りなしたみたいに書いてありましたけれど、あのとき政府与党連絡会議はやっていません。昼食を食べながら(高市と)情報共有したような形はありましたけれど、あんなふうな議論になんかなっていません。

こういうふうに風説がつくられるんだな、とある意味で興味深かったです。高市総理とは毎週定期的に面会していますし、最近は政府与党連絡会議もやっています。

その中で党の状況や私自身が考えていることなどをストレートに総理に伝えています。総理は懐広く構えてくれ、私が怒られたことなんて一度もありません」

小林は高市政権における自民党と官邸との関係について、非常に円滑だと強調する。

「いま国民の関心事は、石油高騰による物価高であったり、物資が足りなかったりすることでしょう。それらが党から政調会にあがってきて、総理に伝えます。中東情勢絡みでいえば、自民党として2月の終わりから2回の緊急提言をまとめてきました。

直近はGWの大型連休直前で、物価の高騰、あるいは物資の安定供給の課題について、党として高市総理に直接伝え、政策提言しています。

先に高市総理が会見で補正予算に言及されたときも、われわれの提言を踏まえ、政府としてこう動くと繰り返しおっしゃっておられました。だから党と官邸、政府との関係はまったく問題ありません」

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