6月26日より映画『ロングウォーク』が劇場公開中。本作は「足つぼマッサージ上映」という、聞くだけでどうかしているイベントが行われた。
実は、本国アメリカでは後述する劇中の状況に合わせるように、ルームランナーで歩きながら鑑賞する「リアルウォーキング試写」が開催されていた。そちらを日本でもやっていたら、こんがりと炎上していた可能性もあっただろう。
しかしながら、本邦で実際に行われたのは、そちらとは大きく異なる。リラックス効果、血行促進、筋肉の緊張の緩和、さらには睡眠の質の改善という、プラスの効果ばかりが見込まれる足つぼマッサージなのだ。それぞれを鑑みれば、劇中の過酷さとは正反対の優しさで満ちているのだと期待できるではないか。騙されたつもりで、ウッキウキで参加したことは言うまでもない。
それでは、実際に体験した上の感想を結論から申し上げよう。騙された。過酷じゃねぇかよ。
端的に言えば痛い。いや、激痛である。足つぼの経験のない自分は、そのゆるふわな言葉のために認識を誤っていたが、劇中のキャラクターたちの痛みや苦しみをマジで体感する、新しい4DX(※座席の動きなどアトラクション的な楽しさが楽しめる上映方式)的な何かだった。
しかも上映中のシチュエーションそのものが怖い。なんてことをするんだ(全て褒めている)。そんな体験型上映イベントのレポートをお届けしよう。
ライター:ヒナタカ
アニメとインディーゲームが好きで映画ならなんでも観る雑食系ライター。「All About ニュース」「マグミクス」「NiEW」のほか、新たに「ダ・ヴィンチWeb」でも連載を開始。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』
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「警告4回」で退場のルールが教官から告げられる
そもそも『ロングウォーク』とは、ホラーの巨匠であるスティーヴン・キングが18歳の時に書き上げた、事実上自身初の長編小説『死のロングウォーク』を映画化した作品である。
その『死のロングウォーク』は、後に小説『バトル・ロワイアル』の着想元にもなった「デスゲーム」というジャンルの「源流の源流」だ。これまでも幾度となく映像化が企画されては立ち消えており、原作が出版された1979年から半世紀近い時を経て、ついに映画として世に送り出されるのだ。
描かれるのは、近未来のアメリカを舞台に、困窮する社会への“光”として開催される競技「ロングウォーク」に参加した50人の若者たちの姿。競技の内容は「ただひたすら歩き続けるだけ」で、破格の賞金と願いをかなえる権利を獲得できるのは、たった”1人”のみ。そして、「時速4.8kmをキープすること」「速度が下回ると警告が始まり、3つで即死」「コースから逃げても即死」というルールが設けられているのだ。
そのルールの要約は、劇中の冒頭で『スター・ウォーズ』シリーズのルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミル演じる少佐が教えてくれるのだが、この足つぼマッサージ上映でもしっかり外国人の教官がかけてつけてくれており、以下のようにルールを明言してくれるのである。
「この映画を観ることができる選ばれし者たちよ。歩き続けなければ終わらない。止まれば死ぬ。そんな『ロングウォーク』は観るだけで歩き疲れる映画だ。この映画を楽しむために、諸君の足には特別なマッサージが施される。足の疲れを残さないことはもちろん、スクリーンの中で必死に歩き続ける彼らの痛みに諸君が寄り添えるよう、足の痛みを徹底的に味わうためのマッサージだ。
しかし、忘れるな。ここは映画館だ。上映中の私語はもちろん、マッサージで思わず漏れるうめき声も、全て許されない。もしそのような声が聞こえた場合、私は諸君に警告を発する。警告が4回に達した時点で、この上映から脱落してもらう。以上がルールだ。準備はいいか?」
良かった。とても良かった。何がって、『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹のような汚い言葉オンパレードの叱責や罵倒ではなく、参加者を選ばれた者であると尊びつつも、わかりやすくルールを告げてくれているのだから。
筆者は「準備はいいか?」という言葉に対して、すぐに「サー、イエス、サー!」と返すことができず、「声が小さい!」と咎められたりもしたが、ともあれ安心して上映に挑むことができた。そのはずだった。

