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「サッカーを辞めたら何が残る?」現役女子選手が2トンの廃棄食材と挑むキャリア

「サッカーを辞めたら何が残る?」現役女子選手が2トンの廃棄食材と挑むキャリア

「手作りの限界」と向き合う。2トンの廃棄食材が突きつけた課題

苗植えから挑戦したサツマイモ。ラインナップが増える喜びの一方で、総量2トンの食材を前に「手作りの限界」という壁に直面する

想いだけで走り出したプロジェクトだったが、活動を続ける中で現実的な壁にもぶつかった。それは「自分たちの手でできることの限界」だ。 最初は梨だけだったジャムのラインナップは、活動を知った地域の人々の応援により、トマト、さつまいも、いちご、柿と増え、四季折々の商品を提供できるまでになった。昨年は廃棄品活用だけでなく、さつまいもを苗から育てて収穫するという「生産」へのチャレンジも行った。 しかし、協力してくれる農家が増えれば増えるほど、供給される廃棄食材の総量も膨大になる。

下條選手は「去年はいただいた分を全て高橋と一緒に手作業で加工できたんですが、今年は『こんなにあるんですか!?』という量で……。全部で2トン近くあったんじゃないかな。ありがたい悲鳴ですが、私たち数人の手作業では到底加工しきれない量でした」と振り返る。

これを受けて林氏も「需要に対して製造が追いつかない。これが今の正直な課題です」と現状を語る。

また、収益面でも課題は残る。売上の一部は協力農家へのキャッシュバックや活動経費に充てられ、さらに「ゼロイチ」の活動資金としてプールされるため、実際に活動する選手たちの手元に残るのは「お小遣い程度」だという。ビジネスとして成立させるには、まだ道半ばだ。 それでも彼女たちが動き続けるのは、そこに「お金以上の価値」を見出しているからだ。

「私たちが作ったジャムは、無添加にこだわっています。『アスリートが作るものだから身体に良い』という信頼を裏切りたくないからです。最初は『珍しいから』と興味を持ってくれたファンの方々が、実際に食べて『美味しい』とリピーターになってくれたり、試合会場で声をかけてくれたりする。それが本当に嬉しいんです。誰かのために動くことが、巡り巡って自分の競技生活のモチベーションにもなっています」と下条選手は語る。

場所が離れても広がる輪。群馬での新たな気づきとビジネス視点

群馬での新たな出会い。地元のイチゴ農家さんと繋がったことは、販路や商品力といった『ビジネス視点』の課題と向き合うきっかけにもなった

昨シーズン、高橋選手は群馬県の「バニーズ群馬FCホワイトスター」に移籍した。拠点が離れればプロジェクトの継続は難しいようにも思えるが、彼女はそれをポジティブに捉えている。

「群馬に移籍して、仕事と練習でよりハードなスケジュールになりましたが、地元のいちご農家さんを紹介してくださったり、新しい繋がりも生まれました。ただ、場所が変わって改めて気づいた課題もあります。それは『信頼』と『商品力』です。伊賀ではチームの知名度や既存の関係性がありましたが、群馬ではゼロからのスタート。商品を置いてもらう店舗を開拓するにも、手作りのジャムでは賞味期限が短く、施設基準の問題などもあって、なかなか取り扱ってもらえない現実がありました」(高橋選手)

高橋選手が直面した「手作りゆえの販路拡大の壁」。それは、伊賀で「製造が追いつかない」という課題を抱えていた下條選手にとっても、プロジェクトを次の段階へ進めるための重要な判断材料となった。「良いことをしている」だけでは広がらない。より多くの人に届け、持続可能な活動にするためには、ビジネスとしての仕組み化が不可欠なのだ。

「今後は法人化も視野に入れ、製造をOEM(委託製造)化するなど、より持続可能なモデルにしていきたいと考えています。OEM化できれば、賞味期限を延ばして常温販売が可能になり、販路も拡大できます。そうすれば、もっと多くの廃棄食材を救えますし、農家さんへの還元も増やせる。何より、この活動がしっかりとした『事業』になれば、引退後のアスリートの受け皿や、新たなセカンドキャリアの選択肢にもなり得ると考えています」(下條選手)

さらに今後は、介護施設や社会福祉施設との連携も模索しているという。施設の方々に製造工程の一部を担ってもらうことで、障がい者の就労支援や社会参加にも繋げたい。農業、アスリート、福祉。それぞれの課題を掛け合わせることで、より大きなソーシャルインパクトを生み出そうとしているのだ。

配信元: パラサポWEB

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