補完医療は「自立」を支えられるか
幾嶋氏が掲げるのは、薬や医師に過度に依存しない医療である。同氏は、患者自身が自分の心身の傾向を理解し、生活や考え方を見直すことが重要だと話す。漢方薬を使う場合でも、それを長期的な依存先にするのではなく、自身の状態を把握する過程として位置づけたいという考えである。
この視点は、慢性疾患や不定愁訴の診療において重要な論点を含んでいる。患者が医療者に一方的に任せるのではなく、自分の状態を理解し、治療や生活改善に参加することは、近年の医療で重視される共同意思決定の考え方とも重なる。
ただし、患者の自立を促す医療は、医療者側の説明責任を軽くするものではない。漢方薬にも副作用や相互作用があり、既存の治療薬との併用には注意が必要である。また、症状の背景に重い疾患が隠れている場合もあり、必要に応じて標準医療につなぐ判断が欠かせない。
いくしま医院の取り組みは、標準医療では拾いきれない患者の語りにどう向き合うかという課題を映している。一方で、その有効性や再現性をどう評価し、医療安全と両立させるかが今後の焦点となる。
【取材協力】
医療法人いくしま医院
院長・理事長 幾嶋泰郎氏
https://www.ikushima.or.jp

