最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
脳トレ四択クイズ | Merkystyle
絶対無理と言われた甲子園へ。部員わずか10人、雪国の野球部の物語

絶対無理と言われた甲子園へ。部員わずか10人、雪国の野球部の物語

高校野球では、冬の間に雪で練習環境が制限される北国の高校は不利、と言われてきた。高校野球100年以上の歴史の中で、北海道・東北勢が優勝を果たしたのは、2004夏・2005夏と連覇した駒大苫小牧(南北海道)と2022年夏の仙台育英(宮城)の2校のみだ。

そうした「不利」とされる雪国の環境の中で、さらなる逆境から着実な積み重ねを経て甲子園の土を踏み、注目を集めた高校がある。青森県の弘前学院聖愛高校野球部の原田一範監督は、甲子園出場を機に一躍名将として知られるようになった指導者だ。強豪校を破り、「絶対に無理」と言われた甲子園に出場を果たしたチーム作りとはどんなものだったのか、そのストーリーを本人に伺った。

部員10人からのスタート。逆境の中でも甲子園を目指して

ビニールハウスの室内練習場。よく見るとハウスの外には身長よりも高く雪が降り積もっている

2025年夏、弘前学院聖愛高校(以下聖愛)野球部は青森県代表として3度目の甲子園出場を果たした。同校は1999年まで女子高で、硬式野球部ができたのは共学となって2年目の2001年。その初代監督となった原田氏に、校長は最初、「野球に力を入れるつもりはない。そのつもりなら、あなたのような無名の人は呼ばない」と告げたそうだ。

原田監督は、小学3年生から野球を始めたものの、自身は選手として甲子園に出場した経験も、そもそも監督の経験もなく、当時は全く無名の存在だった。それでも「いつかは高校野球の指導者となって甲子園へ行きたい」という夢を叶えるため、監督に就任した。

しかしふたを開けてみれば、集まった野球部員はわずか10人。しかも野球経験者は5人で、全員それまでレギュラーを務めた経験はなかった。

加えて、周囲の反発もあった。同僚の教師の中には、飲み会の席で酒が入っていたとはいえ「人脈がないのに、どうやって選手を集めるつもりなの?」「野球部潰してやる!」と心無い言葉をかける人もいたという。

「部活は限られた活動費を奪い合うライバル関係にあり、野球部が新たにできて予算が削られることを、快く思わない先生もいたのです」

と原田監督は自身の著書の中で述懐しているが、実際、グラウンドが使えない雨や雪の日は、体育館の使用は以前からあるバレーボール部やバスケットボール部が優先され、野球部は使うことができなかった。

そこで使われるようになったのが農業用のビニールハウス。雪の多い冬の間、メロン農家の保護者の提案で、巨大なビニールハウスを室内練習場として使うことになったのだ。このように練習場所にも事欠く野球部だったが、なんと創部から13年目の2013年夏、念願の甲子園出場を果たし、一躍脚光を浴びることとなる。

泥臭く。周囲に伝わっていった監督の「本気」

冬は豪雪に見舞われるグラウンド

創部から13年で甲子園出場を果たすまでには、数えきれないほどの工夫や努力があった。その1つが選手の獲得だ。原田監督の本気の姿勢がここに現れる。

「最初は補欠や野球の素人ばかりでしたが、中学校の野球部の先生がレギュラー経験のある子たちを聖愛に送ってくれるようになったんです。地域の中学校の指導者の方の理解や応援がなければ、野球部として成り立たなかったと思います」

とはいうものの、どうやって理解者を増やしていったのだろうか。

「ドブ板戦術で、一校一校、よろしくお願いしますと挨拶をして回りました。門前払いされることも多かったですが、賛同してくれた方もいました」

さらに、部員が集まってからは、全国の甲子園出場常連校に電話をかけまくって練習試合を重ねたという。これが弘前学院聖愛高校野球部の存在と監督の熱意が知られていくきっかけにもなった。

「よく『すごいね』などと言われますが、みんなびびって電話をしないだけ。要は電話をするかしないか、ただそれだけです。そうするうちに『そんなすごい学校と練習試合をやってるの?』と、周囲にも本気度が伝わっていくようになりました。でも、もしも私が大学に進学して野球をやっていたら、こんなことは出来なかったと思います。例えば日大出身だったら日大のつながりの人にお願いしてしまって、全く関係のない学校に飛び込み営業するなんてことはなかったと思います」

何のしがらみも人脈もない無名の監督だったからこそ、「普通ならやらない」「普通はこうである」といった固定観念に縛られず、泥臭く、やれることはすべてやった。

そして、集まった選手たちとも本気で向き合った。2008年には私費で古いアパートを買い取り、自宅兼野球部寮となる「聖球館」を創設。一つ屋根の下で生活を共にし、選手たちと信頼関係を築いていった。

配信元: パラサポWEB

あなたにおすすめ