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絶対無理と言われた甲子園へ。部員わずか10人、雪国の野球部の物語

絶対無理と言われた甲子園へ。部員わずか10人、雪国の野球部の物語

選手とのコミュニケーションを通して人間性を育む

2025年、夏の県大会に向けて父母会や後援会、OB会会長に激励されて、応援してくれる人あっての自分たちだということを実感する選手たち。2025年夏は3度目の甲子園出場を果たした

この他にも、雪が降り練習量が減る冬の間は1、2年生の部員と毎月1対1の面談を行う。1、2年生だけでも50人近い部員が在籍しており、面談には相当な時間を要するが、この時間をとても大切にしている。

「喋っているうちに自分でも気づけなかったことに気づけるし、声にしてアウトプットしていれば、自分の考えが整理されます。前年度は12月、2月、3月に1対1の面談をしましたが、この1ヵ月を振り返ってどうだったのか、次の1ヵ月はどうするのかといったことを聞きます。そうすると、ちゃんと自分が言ったことに責任を持って行動するようになるので、この時間はとても重要です」

監督が指示命令で選手を動かす野球から「ノーサイン野球」に切り替えてから、選手とのコミュニケーション量は10倍ぐらいに増えたという。この時間こそが選手たちの主体性を育んでいるのだ。そして、コミュニケーションにおいて特徴的なのはお互いの呼び方。聖愛野球部の選手たちはみな原田監督のことを「のりさん」と呼び、監督は選手たちを「○○さん」とさん付けで呼んでいる。そうすることで、上からの押しつけではなく、対等な会話ができるようになるからだと原田監督は話す。

野球を通して人間育成をする。その目的は最初から変わっていないと語る原田監督は、野球の面白さのひとつとしてホームベースの形について話してくれた。

「野球のホームベースは、その名の通り家を逆さにした形をしています。バッターはボールを打ったら家を出発し、1塁、2塁、3塁を回って家に帰ってきてはじめて1点になる。その間にはドリームキラー、すなわち相手の守備が『夢は叶えさせないぞ』とばかりに待っているわけです。そこを仲間がヒットを打ったりバントをしたり、コーチャーが一生懸命指示してくれたりすることで、ホームに帰ってこられる。ホームランを打たない限り、一人では家に戻ってこられないわけです。いくらドリームキラーがいても、仲間たちのおかげで自分は家に帰ってこられるといったところが野球の魅力のひとつでしょうね」

ビニールハウスで練習していた無名の弱小チームが果たした甲子園出場。その背後には、自分自身の力で考え、動き、仲間を大切にして夢を叶える選手たちを育て上げるという、もうひとつの大きな成果があった。

「スポーツをやっている人がスポーツマンシップを身につけて、それを社会に生かせたら本当に素晴らしい社会になる。そういう意味でスポーツは世直しの最高のツールだと思っています」と語る原田監督。高校野球を通して取り組む人間育成は、これからもグラウンドの内外でさらなる実りを結んでいく。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:弘前学院聖愛高校野球部


<参考図書>
『1年で潰れると言われた野球部が北国のビニールハウスから甲子園に行った話』
/原田一範著・幻冬舎刊

配信元: パラサポWEB

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