『世界進出』を大きくうたうRokidだが、これまで一番注力してきたのは中国市場。グローバル公式ストア、Amazon、米国、オランダ、中国の物流倉庫からの世界配送の体制は確保しているが、『独立した日本サイト』、『ローカルでの独自サポート体制』、『全国の家電量販店での販売ネットワーク』という仕組みまで整えたのは日本が初めて。ある意味、中国以外への初の本格進出ともいえる。現在、円安で購買力が低く、カメラ付きスマートグラスへの忌避感の強い日本を、なぜ最初の本格進出の舞台に選んだのか? Rokidの副総裁、国際事業統括のZoro Shao氏に聞いた。
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Makuake歴代1位のAIグラス『Rokid』日本上陸──Evenとはまったく「思想が違う」製品だった
2026年07月09日

日本を重視する理由は『日本から受けた恩義』
Rokid日本進出ローンチイベントの舞台袖で、Rokidの副総裁、国際事業統括のZoro Shao氏に単独でインタビューすることができた。なぜ、日本を選んだのか? 多くの人が気になるカメラの問題をどう考えているのか? を中心に、スマートグラスとRokid、そして日本市場のこれからについて突っ込んで質問してみた。
まず、聞いてみたのが、「なぜ、日本だったのか?」という問題だ。
今、円安の影響で日本市場の購買力は非常に低い。このRokidが10万9890円という価格を付けざるを得なかったのがその証左だ。たとえば、もし1ドル115円という相場ならこのデバイスは7万8000円という魅力的な価格になったはずだ。日本政府は好景気をうたうが、それは円安のメリットがある輸出企業の話で、世間では上がらない給与と物価高に苦しんでいる人が多い。10万9890円のデバイスが飛ぶように売れる市場ではない。
さらに、たとえば25歳の人口は中国では約1700〜1800万人いるが、日本では約120万人しかいない。単純に若年層の市場を考えると、日本は中国の14〜15分の1しかないのだ。そんな状況で、なぜグローバル初進出の舞台に日本を選んだのか?

Shao氏の答えは、思いのほか長く、熱のこもったものだった。
「理由はいくつもあります。個人的な好みもある。ただ会社として言えば、私たちはもともとグローバルな企業で、ブランドはアメリカから始まりました。アメリカは世界最大の市場で、当然そこもやっています。それでも日本に重心を置くのは、日本との関係が非常に緊密で、開発者コミュニティがとても活発だからです。小さく見えても、日本はいまだに世界第3、第4の市場ですよ」
Shao氏は、市場の『大きさ』ではなく、『質』が重要なのだと言う。
「日本には良い文化の土壌があって、AIが力を発揮するのに向いている。優れたAI技術も、ものづくりの力も、消費者の生態系もある。それに、私の日本の友人たち、代理店の方々は、追求心があって、上品です。良い製品をきちんと分かってくれて、新しい技術を応援してくれる」
そして、何より『恩義がある』のだと言う。
「Makuakeでの目標は、当初は2億円で十分だと考えていました。なのに、実物を見ても、触ってもいないのに、我々の商品を評価して7413人もの人が、6億3673万円ものお金を出してくれたのです。Makuakeの13年間の最高記録を突破したんです。中国に『滴水之恩、当湧泉相報(一滴の恩は、湧き出る泉で報いる——明代の格言)』という言葉があります。この信頼に、私たちは心を打たれた。だからその信頼に応えるために、グローバル初公開の舞台を日本にしたのです」
カメラ付きスマートグラスに厳しい日本で、どう売るのか?
しかし、もうひとつ気になることがある。それは、日本はカメラ付きデバイスに非常に厳しいということだ。筆者がMeta Ray-Banをしていても一部の人は眉をひそめるし、地下鉄車内など公共の場所では使うのを控えてしまう。実はこれらのグラス型デバイスのカメラは非常に広角で、いわゆる『盗撮』のような写真ではなく、視界全体が写るだけなのだが(iPhoneの超広角の画角で、画質を落とした感じ)、批判する人はそこまで考慮してないだろう。法律ではなく『空気』として自分たちを縛る国民性は、スマホのシャッター音として残っている。
カメラのついたスマートグラスが普及してくると、またぞろ『規制』ということになる可能性もある。

Shao氏は、この問いを「非常に重要な質問だ」と受け止め、笑顔で回答してくれた。
「今のAIグラスは、スマートフォンが登場したばかりの頃に非常によく似ています。スマホも最初は、背面のカメラに対する不安がありました。けれど技術と社会が対話を重ねていくうちに、良い循環が生まれた。日本のように専用の法律や規則を整える国も出てきた。私たちはまず、その法規を守ります」
続けて彼は、この製品が『盗み撮り』を許容しないと強調する。
「撮影のときには、必ずシャッター音とインジケーターが光る仕組みです。不正な使い方のために作ったのではありません。むしろ逆で、クリエイターの撮影を助けたり、日常を記録するためのものです。子どもと遊ぶとき、ペットの散歩のとき、手を使わずに写真を撮れる。友人の中には、結婚式という人生でいちばん大切な瞬間を、このグラスで記録した人もいます」
実際に見せてもらった。写真は「カシャッ」という音とLEDの光で、確かにそれと分かる。ただ、音はさほど大きくないので、賑やかな発表会会場では気付きにくかった。録画に切り替えると点灯したままのLEDはさほど目立たない。
そこを指摘すると、Shao氏の答えは率直だった。
「基準は全世界で共通です。私たちはユーザーのプライバシーを非常に重視しています。データはすべて端末のローカルに保存し、ユーザーのデータをアップロードすることはありません。これから先は、LED部を手で覆うと動作しないようにするなど、悪用を防ぐ方向をさらに強めていく。音をもっと大きくすることも検討しています」
スマホで撮影することには慣れた日本人だが、果たしてカメラ付きスマートグラスは受け入れられるのだろうか? 気になる課題である。