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『新劇場版☆ケロロ軍曹』レビュー。なぜアニメ映画史に残る大炎上となったのか── 「悪夢の5分間」が壊したものとは <連載:逃げない映画考察>

『新劇場版☆ケロロ軍曹』レビュー。なぜアニメ映画史に残る大炎上となったのか── 「悪夢の5分間」が壊したものとは <連載:逃げない映画考察>

観る側の憎悪と徹底的にズレた、「気持ちを代弁してますよ」なセルフツッコミ

 それでも、序盤の『妖怪ウォッチ』や中盤の『プリキュア』などのパロディは面白かったし、パロディの「ギリギリ」っぷりに対するシソンヌ・長谷川のツッコミも笑ってしまったところもある……とフォローもしたいのだが、結局は話がまったく進まないので、観ているこちらのテンションはずっと下降していく。そして「パロディはもういいよ!」とうんざりした矢先に、最悪のことが起こるのである。

 それは、総監督の福田雄一が過去に手がけたドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズのキャラの乱入だ。いや、乱入するにしても、ギャグにするにしても、立場上で彼らが助っ人としてカッコよく活躍するのならまだよかった。

 だが、実際はヨシヒコ(山田孝之)がメレブ(ムロツヨシ)から寒くなる魔法をかけられて「カーディガンを羽織りたいほど寒い!」と言ったり、ムラサキ(木南晴夏)が「特技! アヒル口!」と一発芸をしたり、仏(佐藤二朗)が「このドラマ、14年、16年前だっけ、どうだってウェーイ! ウェーイ!」とほざくなど、わざと役立たずにして、スベり散らかすようなふざけ方をするのだ。

 さらに、実写版『HK 変態仮面』もアニメの姿でやってきて、かろうじてキレの良い動きで戦ってくれたりするものの、それはそれで格好がアレなので文字通りに目を覆いたくなる。

 それでも、それで終わってくれれば、まだよかったのだ。だが、わりとそのすぐ後に実写版『銀魂』のキャストがアニメとして登場するという悪夢が襲いかかる。

 ここで、地球上が超巨大電気ヒーターで暑くなるという展開を反映して、坂田銀時(小栗旬)が「暑い〜!」とぼやきつつ「俺たち、この場面出ていのか?」と疑問を呈し、神楽(橋本環奈)が「大丈夫アル。さっき『ヨシヒコ』も『変態仮面』も出てたね。福田界隈は出ていいってルールアル」と言い、銀時が「雄一、調子こいてんなあ」と返して、シソンヌ・長谷川が「よくぞ言った!」とツッコミを入れるのだった。

 つまりは、『勇者ヨシヒコ』や実写版『変態仮面』や『銀魂』のパロディを入れ込むのも、「よくないことだよね」「ダメだよね」ということを「でも、わかっていますよ」「笑って許してね」とアピールするようなセルフツッコミなのだ。

 観る側の気持ちを勝手に代弁しているつもりだろうが、実際は観ているこちらの怒りとは徹底的にズレているために、ただただ憎悪の感情が増幅される。演じている俳優にさえヘイトが向けられてしまいかねない大惨事だ。

『ケロロ軍曹』のファンがかわいそうだし、過去の福田雄一監督作品まで嫌いになった

 さらに、実写版『銀魂』の面々は、もう一度登場する。銀時が「あ〜! だから、あちぃって!」と大声でぼやき、新八(菅田将暉)が「だからあちぃあちぃって言わないでくださいよ。余計に暑くなるんで!」とツッコミ、神楽が「アチーアル、アチーアル、アチーアル」とずっとぼやき、新八に「うるさー! うるさいうるさい!」と言われるのだ。

 ここで筆者が思ったのは、ただひたすらに「『ケロロ軍曹』のファンがかわいそう」だった。本作は16年ぶりに製作された劇場版アニメであり、これまでの声優のキャストが集う最後の作品になることがほぼ確定している(2026年秋から放送される完全新作のテレビアニメは新たなキャストになる)。ファンはわざわざ劇場へ来て、お金を払って、愛する作品の久しぶりの新作を、現キャストの最後の作品として、心から楽しみにしていたはずなのだ。それなのに関係ないキャラが「暑い〜! 暑い〜!」などとふざけるのを目の当たりにするという……気の毒という言葉では足りないではないか。

 そもそも、『銀魂』『変態仮面』には、原作者がいることはもちろん、『勇者ヨシヒコ』もゲーム『ドラゴンクエストV』を主人公の格好からしてパロディにしている作品だ。それらを自分の「界隈」として登場させること、あまつさえ劇場パンフレットで「前から福田組の悲願として、あのキャラクターたちで『アベンジャーズ』のような集合ものをやりたいというのはあったんです」と語っている(劇中でも思い切り「アベンジャーズ」と言っている)のは、厚顔無恥どころかツラの皮が成層圏を突き抜けているのではないか。

 これは、福田監督がこなしてきた実写映画に対しても、許しがたい裏切りだ。福田監督の実写映画は、生身の人間の、それも芸達者な俳優たちの掛け合いのおかげで、「実写ならでは」のおかしみが確かにあった。だが、今回はそれをアニメで描いたことで失われ、ただただウザくてつまらないことになっている。

 少なくとも、筆者はこのわずか約5分間だけで、過去に楽しんでいたはずの実写版『銀魂』『変態仮面』『勇者ヨシヒコ』のことが嫌いになった。福田雄一の作品が好きだったという気持ちをも否定する、最悪中の最悪の暴挙が、このわずかな時間に詰まっているというのは、なんと恐ろしいことだろうか。

 ちなみに、終盤ではこれまでの数々のパロディについて、「ペコポン(地球)にはたくさんの名作がある」などとメタフィクション的に、物語上でも意味のあるものとフォローする展開がある。それ自体はとても良いアイデアだと思うのだが、そこに嫌いになったばかりの『勇者ヨシヒコ』の画も映り込んでいるので、「この映画を台無しにした作品をも名作だと言い張るのか」と、そのおこがましさにも憤慨してしまった。

 余談だが、記事執筆時点で劇場公開中の映画『最終絶叫計画 令和!』も「矢継ぎ早にパロディを入れまくることを優先で話が脱線しまくる」という、今回の『新劇場版☆ケロロ軍曹』とわりと似た作風だった。それでも『最終絶叫計画』シリーズは、土台となるキャラや世界はオリジナルで、そこに盛大なパロディをぶち込むという内容を「許容してから観る」前提がある。同様のことを、そもそものベースが人様の、しかも『ケロロ軍曹』というファンが多い作品で勝手にやったら、大炎上するのは当たり前だと改めて気付かされる。

配信元: ねとらぼ

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