最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
大阪・天満のストリップ劇場「東洋ショー」を万博前に摘発…は社会として「正しい」のか? 「いかがわしいものを含めて人間」公共訴訟が問う”人間性”とは

大阪・天満のストリップ劇場「東洋ショー」を万博前に摘発…は社会として「正しい」のか? 「いかがわしいものを含めて人間」公共訴訟が問う”人間性”とは

「いかに伝えるか」に力を注ぎ、少しずつ連帯を広げていく

 そのために、チラシとかデザインワークとか、様々なものを駆使して、私たちに届くようにやってくれているということも画期的だと思うんです。

亀石 それは本当に、朱さんの『バラバラな世界で共に生きる』の中に、そういう「連帯」ということについて書かれているところがあって、「われわれ」は小さくて断片的なところからはじまる、という項がありましたね。

「ローティの言う『連帯』とは『われわれ』の拡張でした」と(第4章p125~126)。

 はい。

亀石 「『同じ人間』だから連帯できるのではない。むしろ『われわれ』とはもっとずっと小さくて断片的なところから始まる」と続いて。

私、まさにそうだなと思って。私たちがこういう裁判をするときに、当事者の方々の言葉をどういうふうに、ナラティブとかを伝えていくかを、すごく工夫しているんです。

そのためにキャンペーナーの人がいて、デザインだったりコピーだったり、言葉とか、SNSとか、いろんなツールを使って、「いかに届けるか」ということに、すごく苦心してやってくださっているんです。そういうことによって、ちょっとずつちょっとずつ連帯が生まれてきて、初めて法廷に足を運んでくださった方とか、千円寄附してくれた方とか、ちょっとずつ連帯が広がっていくんですよね。

それがすごく私たちの力になっている、ということがあります。

それに法廷で、裁判官を説得するための理屈とかデータとか、エビデンスだとかをどんなに出しても、それだけではたぶんダメなんです。クラブの裁判をやったときもそうだったんですが、いかにして法廷の外にいる人たちの心を動かすかとか、裁判官の心を動かすか、とかが重要になってくる。

また、議員連盟というのができて、けっきょく法改正につながったんですけど、いかにして議員の心を動かすか、だったり。署名が16万筆集まったんですが、署名してもらうために、人の心をいかに動かすか、とか。けっきょく大切なのは、「人の心をどれだけ動かせるか」です。そのときに、やっぱり言葉というものがすごく大事だ、ということなんですよね。

朱 デザインも、きっとそうですよね。

亀石 本当にそうなんですよ。そういうことを、クラブの裁判のときに、私はすごく学ばせてもらったなと思います。

 確かに。まさにデザインワークのかっこよさとか、コピーワークのよさもそうですよね。同性婚訴訟も、「結婚の自由をすべての人に」訴訟、というタイトルでやっていて。「こういうネーミングで我々は打ち出していますよ」というふうに、ちゃんとリリースを出されてやっているじゃないですか。

亀石 そうですね。

 デザインワークもそうで、さっき、「この共著者4名はすごいオールスターキャストなんだ」という話をしましたけど、さっき言及しませんでしたが、実はCALL4の共同代表のお一人がまさにクリエイターなんですよね。

亀石 そうそうそう。丸山央里絵()さん。

 『はじめての公共訴訟』の著者の一人でもある丸山央里絵さんがクリエイティブ・ディレクターとして、表現まわりとか言葉まわりについてのプロフェッショナルとしてずっと並走されている。その方が弁護士さんたちと並んでCALL4の共同代表に入っているということも、すごく大事で画期的だなと。

亀石 はい。新しいですね。

 そうですよね。「まず本質的なことがあって、そのあとで、見てくれとかくるんだ」というんじゃなくて、「デザインワークとか言葉選びとか自体も本質なんだ」と考えていらっしゃって、こうした考え方って実は、まさにローティと同じなんですよね。

亀石 はい。

 だから、皆さんが思っている以上にすごく近しいというか。リチャード・ローティという人は、「私たち人間や社会とは、受肉したボキャブラリーだ」と言っているんです。

「受肉」ってちょっと難しい言葉ですが、キリスト教用語で、「神様とか精霊みたいな抽象的なものが具体的な姿形を取って人間として現れること」です。

それから、同じように、「ボキャブラリー、言葉遣い」――ここでいう「ボキャブラリー」というのは、それこそデザインとかも入っているんですけど、「それらが具体的になったのが私たち人間だし、社会なんだよ」と。「だからこそ、言葉遣いが変われば、私たちも変わるし、社会も変わるんだよ」ということを言っている哲学者なんです。

 だから「本当の私がどこかにあって、それを表すには、どんな言葉を使おうか」みたいに、「本質を言語化する」みたいなことではなくて、「まさにどんな言葉を使えるかが、私自身なんだ」という発想なんです。

亀石 なるほど、なるほど。

 だから、「まさにデザインワークとかコピーワークって、ある意味、本質そのものでもある」と考えられると思うんです。

亀石 朱さんのこの本も、もしこの装丁じゃなくて、タイトルもこれじゃなかったら、絶対これほど売れてなくないですか?(笑)

 分かります、分かります。本当にそう、本当に。

亀石 本当にこれ、すごくいい。

朱 そうですね。だから、「デザイン言語」という言葉もありますけど、私はやっぱりデザインって見てくれとかだけじゃなくて、それ自体が雄弁なもの、意味を持っているものだと思うので、今回、これは本当に編集さんのご意向とかご配慮もあって、デザイナーさんとけっこうじかに絡ませていただいたんです。まさにCALL4の体制と、ある意味近いかもしれないですよね。

亀石 はい。

 外注するとか、おまかせとかじゃなくて、何度もディスカッションを重ねたり、会話を続けながら、「じゃあ、こういうことですかね?」と確認しながらやっていっていただいたので。その意味で、「単にかっこいい」とかだけじゃなく、かっこいいのも大事なんですけど、ちゃんと中身を含めて表現されている。

亀石 ちゃんと中身の世界観が表れていて。それがすごく好評な理由なんだなと思います。すばらしい。

 デザインの大事さということを、すごく訴えられるかもしれないですね。

亀石 はい。こういうカバー、NHK出版新書では初めてなんですって?

 これ、ちょっと確かにマニアックですが。まさに帯カバー自体を変えていただいているという意味では、ちょっと新しい種類ですね。

亀石 やっぱりホルムズ海峡封鎖でナフサが不足したら、これも白黒になる可能性がありますか?

 そうですね、白黒。本当に今、大変なことになっていますから。だからこそ今、そういうふうに「公共」ということについて、すごく考える機会があると私は思っています。今まさにそういうタイミングですし。

* CALL4共同代表、クリエイティブ・ディレクター。(株)リクルートで『ゼクシィ』の編集長、『ゼクシィアプリ』プロデューサーを歴任した。

「政治に参加する」方法は選挙だけではない

 『はじめての公共訴訟』の帯に書かせてもらって、書き足りなかったことを書評で書かせていただきましたが、それは無料で読めますので、もしよかったら。

亀石 ありがとうございます、本当に。

 その中で一つ書いたのが、今、皆さん、「公共に参加する」、つまり「政治に参加する」ということの回路を、選挙というものだけに強く捉えがちだと思うんですよね。

亀石 そうですね。

 どうしても「選挙で勝った、負けた」とか、「自分が推した候補が当選した、しなかった」、あるいは「過半数を取った、取らなかった」ということばかりにフォーカスしがちで。特に『はじめての公共訴訟』とか、私の本とかも手に取っていただくような方には、「やっぱり、どうせ変わらないでしょう」とか、「選挙で自分の推した候補が勝ったためしがない」みたいな思いがあるんじゃないかと思います。

亀石 そうですね。私も、投票した人が勝ったためしがないです。

 でも、そうやって「選挙だけが公共に参加する方法だ」と思ってしまうと、やっぱり「勝った、負けた」で終わりになってしまうと思うんですよね。

亀石 確かに。

 でも、実際に政治に参加するということは選挙だけじゃないんです。私たちは、国民であれば主権を持っていて、日本国籍を持っていなくて「日本国民」じゃないとしても、この社会に暮らす市民として、納税者であったり、何かしら地域社会の一員であったりするわけです。そして大げさに言えば、あらゆることが政治とつながっています。そして、たとえばデモに行くとか、公共訴訟で闘うこともまさに「政治に参加する」ということなんですよね。

亀石 そうなんですよね。

 「政治に参加する、公共と私をつなぐ回路って、全然選挙だけじゃないんだよ」という話を、特に、選挙が無力に感じられたりする方が多い今の社会だからこそ、したいですし、この『はじめての公共訴訟』という本に書かれていることも、ぜひ知ってほしいと思います。

提供元

プロフィール画像

集英社オンライン

雑誌、漫画、書籍など数多くのエンタテインメントを生み出してきた集英社が、これまでに培った知的・人的アセットをフル活用して送るウェブニュースメディア。暮らしや心を豊かにする読みものや知的探求心に応えるアカデミックなコラムから、集英社の大ヒット作の舞台裏や最新ニュースなど、バラエティ豊かな記事を配信。

あなたにおすすめ