怖いは怖いけど「少年向けのダークファンタジー」に収まる範囲だった
筆者が「初見」でこの映画を楽しみたかった理由は、原作既読者から寄せられる「警告」に、逆にワクワクしたことにもある。
それは「怖い」「精神的にしんどい」といった「かわいいだけじゃない」ことが伝わる意見の数々だった。他にも「2分くらいでわかる予習ムービー」では「かわいらしい見た目とは裏腹に、日々労働をして生計を立てています」といった衝撃的な設定が告げられている。
このゆるふわな見た目のキャラと世界観で、どのような重くて怖い話が展開されるのか……そこへの期待がとても大きかったのだ。
結論から言えば、確かにとても怖かった。
それでいて、もちろん子どもが観られないということもなく、レーティングはG(全年齢)指定であるし、何よりキャラのかわいさのおかげで恐怖表現はかなりマイルドになっている。しかしながら、驚異的な存在から追われるパニックアクション映画の王道的なハラハラドキドキの展開と、何より「業」と「罪」を克明に描いた物語は、大人こそが恐怖を覚えるのではないか。
似ている作品として、要素の一部が重なる映画『ミッドサマー』やゲーム『SIREN』といったガチのホラー作品が挙げられていたりもするが、個人的に印象が近い作品およびジャンルは『鋼の錬金術師』や『HUNTER×HUNTER』といった「少年向け漫画の範囲に収まるダークファンタジー』だった。それらとは違って血が飛び散るといった直接的な残酷描写はなく、怖い事実もやや間接的に「想像させる」塩梅ではあるので、むしろ親御さんは安心して子どもに見せやすいのではないか。
個人的には、「島民や船に乗り合わせたモブキャラが、顔がないシルエット状態になっている」「モモンガの言動があまりにサイコで、通常のパニックアクション映画では真っ先に死ぬタイプすぎる」といったこともまあまあ怖かったりしたが……まあ、それらは本質的な恐怖ではないだろう。
子どもにこそおすすめしたい「正しさ」を考え続ける物語
その上で、本作はぜひお子さんにこそ観てほしいと願う。なぜなら主人公のちいかわが「何が正しいのかを考え続ける物語」であるからだ。
対立や分断がはびこり、誰かを一方的に糾弾することも多い今の現実の世界では、「考えること」そのものを尊ぶ作品の姿勢は、教育上も素晴らしいと思えた。数々の怖いシーンも「それでも(だからこそ)主人公が考える」ことにつながっているので、間違いなく作品には必要だった
また、『ちいかわ』は子どもに絶大な人気を誇る一方で、もともとは13歳以上を対象としたSNSで連載されていた、つまりはある程度は大人向けに描かれた作品とも言える。逆に言えば、「大人にこそささる」「考察がはかどる奥の深さ」があるからこそ、もっと言えば「子ども騙しではない」「子どもを子どもだとみくびっていない」作品だからこそ、ここまで幅広いファンを獲得できたのではないか。

