アニメ映画化のための演出や工夫も完璧
そのように素晴らしい物語と思えたのだが、アニメ映画化にあたっての工夫や演出も完璧としか言いようがない。
劇場パンフレットでは「原作と映画の比較」が掲載されており、ただ漫画をトレースするだけではない、アニメだからこその「構図」や「描き込み」のこだわりがあり、種々の場面の迫力やエモーションがより高まっているのが、明確にわかるはずだ。
声優陣も最高で、特に観る前は「なんだこいつ?」と思うばかりのルックだった「島二郎」が、「こ、こんなにかっこいいの?」と戸惑いつつも惚れたのは、最上嗣生の声と熱演の功績があまりに大きい。
そして、「ある場面でほぼセリフがない」ことも、映像化作品だと、より際立ってエモーショナルになることも思い知らされた。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のラスト、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』のひろしの回想、『カールじいさんの空飛ぶ家』の冒頭、『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』のクライマックスに並ぶ、「サイレント」の名場面だった。
何より、原作漫画でも明確に歌詞が書かれた「あの曲」を実際に聴いてこそ、物語と画のシンクロがあってさらに涙腺を刺激されるのだと、映画を観た後に原作を読んだ身であっても、大いに伝わったのだ。
実は似ていた『映画キミとアイドルプリキュア♪ 』
最後に、本作を楽しんだ人におすすめの映画を紹介しておこう。それは『映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!』だ。
こちらと『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』とは、「島に招かれる」が物語の発端であることや、特定のキャラクターが「長く生きる」事実が示されるなどの共通点がある。しかも、脚本を手がけたのは『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の吉野弘幸であり、悲劇性が強い『ゲ謎』へのアンサーというべき感涙の作劇も、『映画キミとアイドルプリキュア♪ 』にはあったのだ。
その「長く生きる」ことが果たして幸福なのか不幸なのか……それに対しての答えは単純ではない。少なくとも1つに限らないということも、両者の物語を追えばこそわかるだろう。

