原材料や物流コストの高騰が続くなか、食品業界では「価格改定」と「品質維持」のバランスが大きな課題となっている。特に人手不足に直面する飲食店では、調理の効率化と品質安定の両立が不可欠だ。そうしたなか、業務用中華点心の製造・卸を担う亜細亜食品は、品質や調理の再現性を重視する姿勢をとっている。激変する市場環境において、飲食店が長期的な持続可能性を確保するための選択肢について、同社の常務取締役本部長の石田昌弘氏に話を伺った。
コスト高騰と人手不足に直面する今、なぜ飲食店は価格だけで選ばなくなったのか
近年、食品業界では原材料価格の上昇に加え、包装資材、エネルギーコスト、物流費、人件費など多方面でのコスト上昇が続いている。この影響により、多くの飲食店が「販売価格を上げたいが顧客離れが心配」「品質は落としたくないが原価を抑えたい」というジレンマに直面している。
さらに、石田氏の説明によれば、現在の飲食店はコスト面だけでなく深刻な人手不足という課題も抱えているため、専門の料理人でなくても本格的な点心を提供でき、かつ誰が調理しても安定した品質の商品を効率よく提供できるような、運用面での検討が増えているという。消費者の「おいしさ」や「安心感」への関心が高まるなか、コスト削減のみを最優先する運用は困難になりつつある。ただし、飲食店側がコストと品質のバランスをどこまで許容できるかについては、各店舗の経営体力やターゲット層によってばらつきがあるのが現状だ。
「手包み」がもたらす再現性と、HACCP基準による品質管理の実際

数多くの業務用中華点心を取り扱う亜細亜食品では、価格のみを重視した製造を行わない方針を掲げている。市場にはコストパフォーマンスに優れた低価格帯の商品も多く存在するが、同社が目指すのはそれらとは異なる価値の提供だ。価格の安さだけを追求するのではなく、原材料を活かしたクオリティ、そして本場の「點心師」が自社工場で一つひとつ手包みする見た目・食感を大切にするという路線を選択している。
同社の商品ラインナップの約8割は手包みで製造されており、手包みならではの見た目や食感の維持に取り組んでいる。品質管理においては、国際基準であるHACCPに基づいた衛生管理を導入し、原材料の受け入れから製造、包装、出荷まで一貫した体制を整えているという。また、店舗ごとに異なる調理環境に対応するため、再現性の高い商品設計が進められている。一方で、手包みを主体とする製造体制は、職人の確保や育成といった面で別のコストや労力を要する可能性があり、持続的な人員確保という市場側の不確実性は残る。

