令和ロマンの松井ケムリが、自身初となる描き下ろし絵本『ちがうちがう』(2026年7月24日発売)を刊行した。神様が間違えて作った“ちょっとおかしな世界”を舞台に、少年が次々とツッコミを入れていく異色の一冊だ。
絵本づくりを通して見えてきた、漫才と絵本における“笑い”の違い。そして一児の父となって気づいた「子どもにウケる笑い」の正体。創作の裏側から子育て観、人生を変えた失敗談まで、松井さんにじっくり話を聞いた。
漫才と絵本…“笑い”の違いは?
――絵本『ちがうちがう』のアイデアはどのようにして生まれたのですか?
松井ケムリ(以下、同) 「ツッコミを軸とした絵本を描きたい」っていう考えがまず先にあって、そのうえでボケを考えました。子どもが絵本を読むうえで、どうやったら自然にボケを創造できるか考えたとき、「神様が作った世界に子どもが入ったらいいんじゃないか」って思い至って作りました。
――少年・ただしくんのテンポのいいツッコミに思わず笑ってしまう内容でしたが、漫才と絵本では、笑いを作る工程はどう違いましたか?
全然違いますね。漫才は、ボケを言ったあとにコンマ数秒の間があって、ツッコミが入る。お客さんはボケを完全に理解する前にツッコミを聞くことで、「そういうことか」とボケの理解が促されて、笑いが増幅する。でも絵本は、絵を見ながら自分のペースで読めるんで、ボケを自分だけで理解できる。その笑いの生まれ方が、漫才とは明確に違いますね。
――それでも今回、あえて“ツッコミ役”を登場させたのは?
この絵本はツッコミで笑ってほしいわけではないんです。ツッコミはあくまで楽しみ方の一つであって、笑いの本質はボケそのものにあると思っています。本来、絵本にはツッコミって必要ないんですけど、それでもあえて入れたのは、自分にとって一つの挑戦でもありました。
大人と子どもの“ウケる笑い”の違い
――漫才師であり一児の父でもある松井さんが考える、“大人にウケる笑い”と“子どもにウケる笑い”の違いを教えてください。
子どもって知らないことで笑うことが大人と比べて圧倒的に多いんですよ。「なんだこの音?」とか「なんだその顔!」みたいな。大人も本来、その能力は備わっているはずなんですけど、大人になると知らないことの方が少なくなるので、あんまり笑わないんですよ。そういった違いは、自分が父親になって気づきましたね。
――今回、そのような気づきを絵本に反映させた部分はありましたか?
ほぼ反映させてますね。子どもが現実では絶対見たことがないものをボケとして絵にしているので。「こうしたら笑うかな」っていう感覚は、自分の子どもから得た部分が大きいですね。
――過去のインタビューで、子どもの成長に「本ってマジ大事」と語っていらっしゃいましたが、「ツッコミ」も子どもの成長に必要な感覚だと思いますか?
必要というか、いいトレーニングになると思います。この絵本で例えると、象が「ペロン」って鳴くことに対し、「鳴き声が違うよ」「象はパオーンって鳴くんだよ」ってツッコまなきゃいけないんですよ。だから「ツッコミ」って事象を抽象化して言語化するトレーニングになりますよね。
――もちろん、この絵本をお子さんにも読ませたいですか?
そうですね。メッセージ性のある内容ではないけど、絵自体も細かいし、本を楽しむための集中力を養ってほしい。この絵本自体はそんなに集中力がいらないので、本を読むハードルが下がる一冊になればいいなって思います。
――ちなみに、絵本を読んだ相方・くるまさんの反応は?
「めっちゃいい」「っぽい!」「売れそう」って言ってました(笑)。

