中国はロシアがなくても困らないが、ロシアは困る
だが、これは「西側からの独立」ではない。ロシアが、習近平を拝める「中国の属国」になりつつあるだけである。
しかも、以前より条件は悪い。欧州には複数の国と企業があり、ロシアにも売り先を選ぶ余地があった。いま中国向けの取引が増えても、買い手は事実上1つである。
中国は中東や中央アジア、LNG、再生可能エネルギーへ調達先を分けられる。ロシアには失った欧州市場へ戻る道がない。
つまり、中国はロシアがなくても困らないが、ロシアは中国なしでは困る。この差が、そのまま価格と外交の差になる。
首脳会談時の写真だけを見れば、プーチンはいまも大国の指導者に見える。だが、国際政治で本当の力が表れるのは、席順でも握手でもない。相手に「ノー」と言えるか、条件が悪ければ席を立てるかである。
現在のロシアには、その自由がない。だから習近平は急がず、プーチンだけが焦る。
パワー・オブ・シベリア2は、その現実をプーチンに突きつけた。中国は必要なら契約する。不要なら待たせる。ロシア側が急いでいる事情など考慮しない。「無制限の友好」とは、習近平が中国の利益を無制限に守るという意味だったのだ。
ロシア経済は崩壊していない。しかし…
なぜプーチンは、ここまで弱い立場に落ちたのか。
原因はウクライナ戦争である。
ロシア経済は崩壊していない。しかし、戦争を続けながら国を豊かにする道は閉じた。2026年第1四半期のGDPは前年同期比で減少し、成長率見通しも引き下げられた。
物価は高く、政策金利は14%に達している。企業は借金をして工場や設備を増やしにくく、家計も住宅や車を買いにくい。
軍需工場が動けば、GDPの数字は増える。兵士に高い契約金を払い、戦車や砲弾を大量に造れば、統計上は需要が生まれる。
だが、前線で壊される戦車は住宅にも道路にも工場にもならない。軍需へ人、資材、予算を集めるほど、普通の企業は細る。戦時景気は成長ではない。将来使うはずだった人と金を燃やして、現在の体面を保っているだけだ。
ロシアの財政にも余裕はない。2026年上半期の連邦財政赤字は5.73兆ルーブルに達し、当初の通年計画を半年で上回った。戦費は削れず、燃料不足や景気減速への対応も必要になる。足りない分は増税、国債、歳出削減のいずれかで国民へ回る。

