プーチンが積み上げた死者と負傷者
ここでも中国の存在が重くなる。ロシアは石油と天然ガスを売って外貨を稼がなければならない。ところが欧州を失った以上、大口の買い手は限られる。
中国はその事情を知った上で契約を引き延ばし、より有利な条件を待てる。ロシアの財政悪化は、中国にとって交渉材料なのである。
さらに、戦場がロシア国内へ戻ってきた。
ウクライナの長距離ドローンは、ロシア各地の製油所を攻撃している。ウクライナ支配地域から約2700キロメートル離れたオムスクの大規模製油所も攻撃を受けた。
ロシア政府は燃料不足を抑えるため輸出を止め、ベラルーシからの輸入を増やし、地方の燃料をモスクワへ回した。
石油大国が、自国の給油所を守るために燃料を外国から買う。これは小さな失敗ではない。プーチンがウクライナへ持ち込んだ戦争が、ロシア国民の日常へ戻ってきたのである。
もっと深刻なのは兵士の不足だ。
ロシア軍は大量の兵士を投入し、わずかな土地を取る戦いを続けてきた。だが、2026年には月間の死傷者数が新規募集数を上回った。補充するより早く兵士を失い、4月と5月には占領地も純減した。
プーチンが積み上げているのは戦果ではない。死者と負傷者である。
戦争を続ければ、人と金を失い、中国への依存がさらに深まる
それでも戦線を維持するため、ロシアは契約金をつり上げ、受刑者を集め、外国人を募り、北朝鮮兵まで投入した。大国を名乗る国が、北朝鮮から兵士を借りなければ戦争を続けられない。これを外交的成功と呼ぶのは無理があろう。「国力低下」の告白そのものだ。
国民の空気も変わり始めた。
燃料不足、物価高、通信規制、終わりの見えない戦争が重なり、国営調査でもプーチンの支持率は下がった。もちろん、政権がすぐに倒れるわけではない。治安機関は強く、反対派は抑え込まれ、戦時予算も大きい。
しかし、倒れないことと勝っていることは別である。プーチンは戦争を続ける力を残している。だが、戦争によってロシアを強くする力は失った。
撤退すれば、何のために大量の兵士を死なせ、欧州との関係を壊し、経済を軍需へ傾けたのかを問われる。続ければ、人と金を失い、中国への依存がさらに深まる。自分で始めた戦争によって、自分で逃げ道を塞いだのだ。
その弱みを最も冷静に見ているのが習近平である。

