「シリーズ化しても変わらない、日本オリジナルの作品性を伝えたい」
――公式YouTubeの予告映像には「待ちきれずにディズニープラスを契約した」「続きが気になる」といったコメントも寄せられています。いよいよファン待望の配信が目前に迫りますが、現在の率直なお気持ちを聞かせてください
多田監督:『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の短編アニメーション作品からスタートして今回のシリーズ化が決まり、全8話の構成です。全8話一挙公開ということで、配信開始日の8月5日には全話を見た方からの感想が一気に寄せられると思うので、それがすごく楽しみです。良くも悪くも、すぐに反応を知ることができるので、とても楽しみにしております。
――世界中の「スター・ウォーズ」ファンへ日本発の作品を届けることについて、どのように受け止めていますか
多田監督:『スター・ウォーズ:ビジョンズ』の短編アニメーション作品で神山監督(神山健治総監督)が描いた日本オリジナルの側面を「絶やさずに生かしてほしい」というのが、今回の作品の使命だと思っています。われわれとしても、ファンの方々に「シリーズ化しても変わらない、日本オリジナルの作品性」を伝えたいと思っています。
――Production I.Gならではの魅力を生かしながら、「スター・ウォーズ」という世界観に落とし込む上で、特に意識されたことはありますか
多田監督:本作には「スター・ウォーズ」の本編と地続きになっている部分がないんです。あるとすれば、唯一全く同じものとして描かれている「ライトセーバー」のみです。登場人物は「スター・ウォーズ」シリーズのルークの子孫ではないし、誰かの一族だったり、元帝国軍人だったりもしません。カノンと呼ばれる本編の設定を引き継ぐ人がいないんです。「スター・ウォーズ」の世界の話で、200年後という設定のイメージはあるんですが……。そのなかで、新たにジェダイとなっていく登場人物たちを、魅力的なキャラクターにするために作品を作っていく、というのが今回のミッションでした。
「スター・ウォーズ」の『新たなる希望(エピソード4)』『帝国の逆襲(エピソード5)』『ジェダイの帰還(エピソード6)』を観ると、主役のルークって何者? レイア姫って何者? ハン・ソロって何者? というところからスタートしているじゃないですか。彼らがどういう存在だったのかは、『ファントム・メナス(エピソード1)』『クローンの攻撃(エピソード2)』『シスの復讐(エピソード3)』に戻らないと分からない。
なのでわれわれも、「エピソード4」、「エピソード5」、「エピソード6」を200年後の世界でやり直すつもりで作っています。このあたりは、神山監督の元々のコンセプトでもありました。直接つながりを持ってしまうと、結局「ルークの子孫」だとか、どのように運命づけられている人であるかが分かってしまうじゃないですか。本作ではそういったつながりのない、新たなルークやレイア姫、ハン・ソロのような魅力的なキャラクターを作っていくのが、作品作りの要点です。
――そのなかで苦労した点はありましたか
多田監督:苦労ということではないんですが、やはり元々の「スター・ウォーズ」の『新たなる希望(エピソード4)』『帝国の逆襲(エピソード5)』『ジェダイの帰還(エピソード6)』を新たに作ろうとすると、当然登場人物が負けないくらい魅力的で広がりがないといけないので、そこが一番苦労したところですね。
作品を観て、アクションは迫力あったけれど「このキャラを好きになった」「このキャラのコスプレをしたくなった」と思ってもらえないと、ルーク、レイア姫、ハン・ソロのようなキャラクターにはなれないと思うんです。苦労という意味では、そのキャラクター作りと魅力をきちんと見せるところに、力を入れました。
――具体的に、キャラクターの魅力を見せる上で工夫したところはありますか
多田監督:例えば短編から出ているキャラクターでいうと「イーサン」ですね。彼のキャラクターと成長性は、1話から想定して作り込みました。人柄もよく、マスターレス・ジェダイとしてライトセーバーも使えるイーサンが、どのようにこの作品で成長していくのか。実は第1話から最終話のイーサンを想定しつつ、逆算して演出をしていました。
キャラクターたちの魅力を8話で表現
――多田監督は『銀河英雄伝説』『黒子のバスケ』など数々の作品を手掛けられていますが、これまでの経験が本作に生かされた場面はありましたか
多田監督:本作の総監督は神山さんで、ぼくは現場監督として作業をするスタッフに指示を出して、それをまとめる仕事をしました。『銀河英雄伝説』や『黒子のバスケ』など、ぼくが手掛けたほとんどの作品では、少ない登場人物で映像美を追ったりテーマ性を追ったりするよりも、キャラクターたちの魅力をいかに表現するか、に重きを置いてきました。神山総監督はおそらくその部分を見込んでくれて、「多田くんならそこができるよね」と考えたのでは、と思います。
『九人目のジェダイ』の、まだ設定が出来上がっていない新キャラクターを「8話の中で表現する」というミッションは、これまでぼくが手掛けてきた作品と共通する部分ではないかなと思います。
キャラクター作りや設定、世界観など、その世界に埋め込まれた設定を表現していくというよりは、キャラクターたちがどう動くかが重要だと思っています。ぼくが担当してきた作品はそういう傾向があるので、今回もそのノウハウをフルに生かせて、キャラクターを表現できたのではないかと思います。
――制作中にLucasfilm(ルーカスフィルム)からのオーダーややりとりで印象に残っていること、「これぞ『スター・ウォーズ』」と思ったフィードバックはありますか
多田監督:「スター・ウォーズ」は世界的な作品なので、さまざまなルールがあるのかと思っていたのですが、意外と褒めていただくことが多かったです。ただ、ライトセーバーの取り扱いやバトルシーンの表現についての意見をいただくことは多かったです。
「スター・ウォーズ」は、殺戮(さつりく)にカタルシスを感じさせる作品ではないんです。ぼく自身も神山総監督も分かってはいたんですが、共通認識としてLucasfilmから確認されることがありました。ショッキングなライトセーバーや宇宙戦艦のバトルシーンを描くことが「スター・ウォーズ」の目的ではない。数多くのバトルシーンはありますが、ショッキングで刺激になるようなシーンでカタルシスを表現する作品ではない、と共通認識として確認されることが多かったです。「スター・ウォーズ」本編を観ていれば、分かることではありますが。
なのでそこを守った上でキャラクターを活躍させて、ドキドキワクワクしてもらう要素がないといけない。そこがLucasfilmやディズニーとやりとりするなかで、何度も確認があった部分でした。

