都心から近い、絶景の山々

僕が中学まで育った新潟の石打丸山も、この夏はゴンドラ「サンライズエクスプレス」で登った先のグランドテラスから、魚沼平野を一望できる。5〜6月は水を張った田んぼが鏡のようになり、夏は青緑、秋には黄金色へと表情を変えていく。ガーラ湯沢に至っては東京駅から新幹線で70分ほど。都心から日帰りで、汗をかかずに山の上まで行けてしまう距離感だ。
必要なのは、ヨーロッパの正解をそのまま持ち込むことではなく、こうした日本各地の取り組みに、もっと多くの人が気づき、実際に足を運ぶことだと思う。豊かな森、名水と呼ばれる水、標高が上がれば涼しい気候、土地ごとの食文化。日本の山はヨーロッパのアルプスに引けを取らない資産を持っている。その上、都心からのアクセスが良いという圧倒的な強みまである。
そもそも日本は、国土の7割近くを山地・丘陵地が占め、森林率も先進国のなかでトップクラスという、世界的に見てもかなり特殊な国だ。電車や車で足を伸ばすと 少し走れば、標高2000m級の稜線にまで手が届いてしまう。これほど日常の延長線上に本格的な山があり、しかもそこに温泉や郷土料理まで根付いている国は、世界を見渡してもそう多くない。
ヨーロッパに7年間住んでみて、むしろ「日本人は自分たちの山の豊かさに気づいていないのではないか」と感じることが増えた。
夏のスキー場を体験してほしい

冬のあの斜面が、夏はハイキングコースになり、夜はビアガーデンになり、時にはゴルフやマウンテンバイクの舞台にもなる。山は冬だけの場所じゃない。それを知らずに毎年夏を過ごしてしまうのは、本当にもったいない。
大掛かりな装備も、特別な体力も、海外に飛ぶ必要すらいらない。新幹線や車で行ける距離に、汗をかかずに絶景へ連れて行ってくれるゴンドラが、もう動いている。「知らなかった」と思った人にこそ、冬になる前に、近くのスキー場の名前を一度調べてみてほしい。きっと、冬とはまった違う顔をした山が、あなたを待っている。
