のどのほこりを浮かせて異物の排出を助ける!

上咽頭をいい状態に保つ方法の一つである「重曹クラッカー療法」(やり方は下項を参照)を知ったのも、コロナ禍に行われた、ある講演会でした。

健康な人間の体は、弱アルカリ性を保っています。けれども体が酸性に傾くと、免疫力が低下し、炎症が起こりやすくなります。実際、口の中の酸性度が高まると、細菌が増殖し、歯周病や虫歯などを発症しやすくなるとわかっています。

カゼのひき始めに、のどがイガイガするなどの違和感を覚えることがあるでしょう。それはのどの上皮細胞にウイルスなどが侵入してきているのです。

このタイミングで重曹クラッカー療法を行い、口の中を弱アルカリ性にすることで、ウイルスなどの増殖を抑えられる可能性があります。

重曹には収斂作用があるため、のどについたほこりなどを浮かせる働きも期待できます。異物の排出を助けるので、そうした面からも、口腔内の環境改善に役立つはずです。

ただし、実践にはいくつか注意点があります。

クラッカーはできるだけ、食塩不使用の物を選びましょう。重曹がナトリウムを含むので、塩分を過剰に摂取しないようにするためです。特に、高血圧や腎臓病があり塩分を制限している人は、注意してください

塩気があると嚥下作用が働くことも、理由の一つです。のどに重曹を滞留させておくことが肝心なので、水が飲みたくなるようでは意味がありません。

それから、高齢で誤嚥しがちな人は、この方法の実践は控えてください。万一むせたときはすぐに水を飲むなどして、対処しましょう。

この重曹クラッカー療法は、「鼻うがいをしたいけれども、できない」という人にも向いていると思います。実はお恥ずかしい話ですが、私は耳鼻科医にもかかわらず、数年前まで、怖くて鼻うがいができませんでした。ですから、できない人の気持ちはよくわかります。

今は私もすっかり熟練し、鼻うがいを毎日の習慣としていますが、それでも万一のために、重曹とクラッカーを備え、ときおり食べています。

インフルエンザを含む多くの患者さんを診ていますが、おかげで以前より感染症に対して体が強くなりました。皆さんも実践してはいかがでしょうか。

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重曹クラッカー療法のやり方

食塩不使用のクラッカーを選び、塩辛く感じる場合は重曹を減らす。特に高血圧などで塩分を制限している場合は注意する。
誤嚥に注意し、万一むせたときはすぐに水を飲む。心配な場合は医師に相談する。

用意する物(2~3回分)
・クラッカー…2枚
・重曹(食用の物)…小さじ1/3

(1)クラッカーを粉々にする(袋に入れ外側からスプーンなどで潰すと粉砕しやすい)。重曹とよく混ぜる。
(2)のどのイガイガ感などが気になったときに、(1)をスプーンですくって食べる。食べたあと30分ほどそのままにしておく。

この記事は『壮快』2022年5月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b602294.html