外貨建て保険のメリットは

では、外貨建て保険のメリットは何でしょうか?ひとつは、前述の金利水準の違いです。日本は、バブル崩壊から金利が低下し続け、さらに、アベノミクス以降の日銀による大規模な金融緩和により、地を這うような金利であることは言うまでもありません。

金利は、保険商品の設計にも影響します。なぜなら、契約者が支払う保険料は、保険金や満期金の支払いに備え、保険会社がその国の国債を中心に運用しているためです。保険会社が保険商品を設計する際は、その運用利回り(予定利率という)を想定して契約者が支払う保険料を決めます。

つまり、同じ保障を契約する場合でも、予定利率が低い場合は、保険金の支払いのために運用で資金を多く準備することができないため保険料は高めに、予定利率が高い場合は保険料を抑えられるというわけです。外貨建て保険のメリットは金利が高く予定利率が高いということになります。

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外貨建て保険をやってはいけないと言われる理由は


YES・NO・チェック
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一方で、外貨建て保険についてネガティブな見解もあります。何でもそうですが、メリットがあればデメリットもあるのです。以下見ていきましょう。

リスク・デメリット

外貨建て保険のリスクは、為替レートの影響を受けることで為替リスクと言います。リスクとは不確実性のことを指しますので、為替リスクは良い方向にも悪い方向にも働きます。

米ドル建ての保険に加入し、毎月の保険料が100ドルだったとしましょう。1ドル110円の月の保険料は1万1000円ですが、円安になり1ドル150円になると約36%アップの1万5000円を支払わなければなりません。円高になってくれると保険料の負担は少なくなるため嬉しいですが、先々のレートは神様でなければ分からず、支払う保険料の総額は、円建て保険にくらべ不透明です。

一方、保険金の受け取り時は、円安になっていると増えます。死亡保険金が5万ドルの死亡保険に加入したとしましょう。死亡した時に、1ドル=110円なら受け取りは550万円、1ドル=150円なら750万円とその差は200万円。保険金額が大きくなるほど、少しのレートの違いでも円での受取額は大きく違ってきます。

また、円からドルへ、ドルから円へと通貨交換をする時に掛かるコストも知っておきましょう。通貨交換をする時は、同じタイミングでも、ドルを買う(円をドルに換える)時と、ドルを売る(ドルを円に換える)時とではレートが異なります。これは、交換する時のコストが、加味されているからです。

交換レートの物差しになる基準レートをTTM(仲値)といいます。それを軸に円をドルに換える時にはコストが上乗せされ(TTS)、ドルを円に換える時には差し引かれます(TTB)。下記の例では、保険料を支払う時と受け取る時、どちらも基準レート(仲値)が同じでも2円の開きがあることが分かります。思ったより保険料が高い、思ったより受け取り額が少ないとならぬよう理解しておきましょう。実際のコストは、50銭や25銭のように保険会社ごとに上乗せ額が定められているので契約時に確認しておきましょう。

(例)
TTS(顧客電信売相場)=131円 ←円をドルに換える
TTM(仲値)1ドル=130円
TTB(顧客電信買相場)=129円 ←ドルを円に換える

よくあるトラブル事例

ここからは外貨建て保険の契約で起こるトラブルを紹介します。
一般社団法人生命保険協会が公表する「銀行等代理店で発生した外貨建て保険・年金の新契に関する苦情件数」によると、2014年度の苦情件数は922件。それに対し、2019年度には2822件と3倍超に増えています。

トラブル例としては、「元本保証と思っていたのに違った」「為替リスクがこんなに影響するとは知らなかった」など、損失が生じているケースで起こります。

これは、円建てより金利が高いという点に着目して外貨建て保険の販売が行われていることから、殖えるという印象が強く残るためと考えられます。円高に振れると前述のような為替リスクが悪い方に働くため、元本割れをしてしまい苦情に繋がるようです。

また、元本割れにならずとも、思ったより増えていないということから苦情に繋がるケースもあります。これは、為替レート以外にも生命保険に掛かる様々なコストが影響しています。

保険は、契約を維持していく上で諸費用が掛かっています。円建てでも同様に費用は掛かりますが、外貨建ての方がコスト高になる傾向にあります。以下が主な費用です。

・保険関係費用:保険契約の締結や維持、保障などに掛かる費用
・契約締結時費用:一時払い保険料から差し引かれる費用で残りの金額が運用される
・市場価格調整・解約控除:解約した場合に控除される費用
・年金管理費:年金で受け取る場合の管理費用
・通貨交換費用:円と外貨を交換する時の費用

保険関係費用は、契約を維持するのに必要な人件費、保障に対するコストです。また一時払いの場合は、契約時に払込みした保険料から4%や6%などと決められた手数料が差し引かれます。一定期間内に解約する場合は、市場の金利状況などが勘案され差し引かれる市場価格調整や解約控除などの手数料もあります。また、年金保険などは、受け取り時に年金管理費用が掛かるなどもあります。

外貨建て保険の普及とともにこのようなトラブルが増えましたが、2019年以後の苦情件数は減少へと転じ、2021年度には1375件でした。これは、説明義務などの販売体制が徐々に見直され、販売側と購入者の知識格差などに強く配慮をされるようになったからです。しかし、契約者も「何となく良さそう」という漠然とした契約をしないよう、きちんと内容を理解する必要があります。契約をする時に説明がありますが、パンフレットや保険の設計書などの後方にもリスクやコストのことがまとめて記載されているため確認しておきましょう。