相続の限定承認とは?相続放棄との違いや複雑な手続きの流れを解説

親が多額の借金や住宅ローンなどを残して亡くなった場合、プラスの資産の範囲でマイナスの資産を相続する「限定承認」があります。今回は、限定承認のメリットや相続放棄との違いを解説します。複雑な手続きや注意点もまとめているので、検討に役立てください。

限定承認の注意点

限定承認には多くのメリットがある半面、前項のように非常に手続きが複雑で、手間と時間がかかります。また、相続人全員の合意が必要となるため、相続人同士で意見が割れて1人でも限定承認に反対する人がいる場合は限定承認ができなくなります。

相続放棄をした方がいい場合もある

明らかにマイナスの資産の方が多い場合や、相続人全員の合意が得られない場合などは、相続放棄を選択した方がよいでしょう。限定相続の手続きの手間や時間、相続人間での今後の関係性も踏まえて限定承認を選択するかどうかは、慎重に判断しなければなりません。

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公告・清算手続きがある

限定承認を行う場合、申述の後にも「公告・清算手続き」が必要です。特に公告手続きは、相続人が1人しかいない場合は限定承認の申述受理から5日以内、共同相続の場合は財産管理人が選任されるので、その選任審判の告知を受けてから10日以内に手続きをしなければならないため、この期限を過ぎてしまわないよう注意が必要です。

相続放棄の場合は、申述さえ済んでしまえば残りの手続きはほとんどありません。

譲渡所得税を支払う

限定承認を選択すると、故人から相続人に財産が時価で譲渡されたと見なされ、譲渡所得税を支払う必要が生じます(みなし譲渡所得税)。譲渡所得税は故人の債務なので、他の債務と同様に、限定承認の効果が及びます。なお、故人の所得については相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告を行う必要があります。

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まとめ

限定承認は、プラスの資産の範囲内でマイナスの資産も相続することです。メリットが多い半面、相続放棄よりもはるかに手続きが複雑で、手間と時間がかかります。また、相続放棄と同様、個々の相続人の置かれている状況に応じてメリットとデメリットのバランスも変わってきます。限定承認を選択する可能性がある場合は、相続発生後速やかに相続財産の調査を行い、相続人同士で密に連絡や調整を行った上で慎重に判断していく必要があるでしょう。高度な専門性が求められる場面もあり、専門家をうまく活用することをおすすめします。

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森田聡子

早稲田大学政治経済学部卒業後、地方紙勤務を経て日経ホーム出版社、日経BPにて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は書籍や雑誌、ウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に対し、難しい投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく「書く」(=ライティング)、「見せる」(=編集)ことをモットーに活動している。