退職金が少ない?!中小企業と大企業を比較解説!転職時の退職金についても

「転職や定年退職した際に受け取った退職金が予想より少ない」という事態はよくあるトラブルです。本記事では、退職金の一般的な相場や仕組み等を分かりやすく解説します。退職金額は勤続年数や退職事由等によって変動するので、実際にいくら支給されるのかは、よく確かめておきましょう。

転職時の退職金に関する注意点

続いては、転職の際に注意するべき退職金の考え方について解説していきます。

そもそも全ての会社に退職金制度があるわけではない

退職金の支払いは、法律で会社に義務づけられているわけではありません。そのため、退職金制度を設けていない企業もあるので注意が必要です。厚生労働省の中央労働委員会による令和3年の調査結果では、退職一時金制度がない企業は10.2%存在します。

この割合は調査対象企業を中小企業に限定するとより顕著です。東京都産業労働局による令和2年の調査では、退職金制度がない中小企業は20.9%存在すると報告されています。

自社の退職金制度の有無について知りたい場合は、就業規則や賃金規定等を確認しましょう。

【参照】厚生労働省「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査(PDF)」詳しくはこちら
【参照】東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)(PDF)」詳しくはこちら

【あわせて読みたい】退職金がもらえない会社もある?その場合の将来設計とは

転職時の退職金は想像以上に少ない

前述の通り、基本的に退職金は「勤続年数」と「退職事由」によって大きく左右されます。

勤続年数の面からみると、同じ企業で数年働いた人は定年まで勤めた人よりも支給額は低くなるのが一般的です。したがって、転職によって給与がいくらか上がっても、退職金と合算した場合の生涯収入は期待より低くなる可能性もあるので注意しましょう。

転職の理由がリストラ等の会社都合によるものではなく、自らの希望である場合、退職金の支給額は下がってしまいます。

例外的に退職金がもらえないこともある

退職金制度があっても、支給条件や退職事由によっては退職金がもらえないケースもあります。特に注意が必要なのは、企業が退職金の支給条件に一定の勤続年数(最低勤続年数)を設けている場合です。

厚生労働省による前掲調査をみると、会社都合退職の場合は最低勤続年数を1年未満に設定している企業が55.5%なのに対して、自己都合退職の場合は50.7%の企業が3年以上を最低勤続年数と設定しています。

また、競合他社への転職に対して制限を設けている企業もあり、そうした場合は退職金の額や支給の有無に影響が出る場合もあります。その他、不祥事を起こしたり、就業規則に著しく反する行いをしたりして懲戒免職処分を下された場合は、退職金がもらえないケースも考えられます。

さらに、退職金制度に「企業型確定拠出型年金」を採用している企業から転職する場合にも注意が必要です。転職先の企業も同制度を採用している場合はそのまま移管できますが、そうでない場合は個人型確定拠出型年金(iDeCo)に加入し直さないと積立を継続できなくなります。

【参照】厚生労働省「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査(PDF)」詳しくはこちら

【あわせて読みたい】【放置NG】iDeCoの転職後の手続き・注意点!退職後や企業型確定拠出年金についても解説

退職金が未払いのトラブル

退職金を巡って、企業と従業員のあいだでトラブルが発生する場合もあります。具体的には、以下のようなケースです。

ケース1:「会社が退職金を支払う能力を喪失してしまった」
企業が倒産したり、著しい業績不振に陥って資金支払い能力がなくなったりした場合、本来もらえるはずの退職金が支払われないケースが起こりえます。

厚生労働省はこうした状況に陥ってしまった労働者に対して、「未払賃金立替払制度」という救済策を用意しています。この制度は、賃金が支払われないまま自社が倒産してしまった労働者に対して、本来支払われるはずだった賃金の一部を行政が立て替え払いしてくれるというものです。

もし自社が倒産してしまい、退職金をもらい損ねてしまった場合は、最寄りの労働基準監督署に相談してこの制度の利用を申請しましょう。

ケース2:「会社との関係が悪化して退職金の支給を拒否された」
企業と従業員の認識の違いによって、退職金の減額や不支給がトラブルに発展する場合があります。例えば、就業規則違反等によって懲戒免職処分を受けて退職した場合等は、こうしたトラブルが多発しやすいです。

厚生労働省によれば、一定の事由があれば、企業が規定の退職金を減額したり不支給したりすることは認められます。しかし、それはあくまでも、該当の労働者がこれまでの功績を帳消しにしてしまうほどの過失を起こしてしまった場合に過ぎません。

つまり、解雇の理由が退職金を支給しないほど重大なものなのかどうかという点が、従業員側と会社側の認識の違いであり、裁判等での争点になります。

退職金の減額や不支給に納得がいかない場合は、最寄りの労働局に相談してみるのがおすすめです。この場合、労働調整委員会による斡旋を受けて労働者と企業のあいだで解決の方途を探ることになるでしょう。

【参考】厚生労働省「退職金不払い」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性」詳しくはこちら

(広告の後にも続きます)

まとめ

退職金は、企業規模別・勤続年数別・業種別にみると平均の金額はさまざまです。また、退職事由も退職金額の多寡や支給の有無を決める大きなポイントだといえるでしょう。

自分の退職金が一般的な相場と比べて多いか少ないかは、これらのデータを基準に判断するとよいでしょう。転職前や、定年退職後の資金計画を考える際は、自分がいくら退職金をもらえるのかしっかり把握しておくことが大切です。

【あわせて読みたい】「退職金なし」でも安心して老後を迎えるためのライフプランとは?

ご留意事項

本稿に掲載の情報は、ライフプランや資産形成等に関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
本稿に掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、三菱UFJ信託銀行の見解を示すものではありません。
本稿に掲載の情報は執筆時点のものです。また、本稿は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び三菱UFJ信託銀行が保証するものではありません。
本稿に掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、三菱UFJ信託銀行は一切責任を負いません。
本稿に掲載の情報に関するご質問には執筆者及び三菱UFJ信託銀行はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

吉野裕一

FP事務所MoneySmith 代表
2000年に私自身がマイホーム購入した際に、どうやってお金を貯めていけばいいか情報を集めた事をきっかけにファイナンシャルプランナーという資格がある事を知り、株投資も始めたりしながら資格を取得。
2006年に正式にFP事務所MoneySmithを設立。
以後、住宅ローンアドバイザーやDCプランナーなどの資格を取得しながら、多くの方の相談をお受けしております。