還暦を過ぎたら意見はいわない

それから、年を取ったら、できるだけかわいい人になりたいですね。これは、少し説明が必要かもしれません。

年を取ると、謙虚さがなくなりがちですよね。会社でいい地位までいって引退した人が、リタイア後も命令口調だったりするようにね。あと、やたら正義感を振りかざして怒ったり、説教したりするのも周りの迷惑になります。聞かされる側はたまりませんからね。

でも、長年のクセが抜けない。どうしたらいいのか。

かわいい人になりたい

ここは努めて、意見をいわないことです。

還暦で人は赤ちゃんに戻るといいます。赤ちゃんはうんちをしても、「うんち、うんち」と見たまんまをいうだけです。だから、かわいい。

でも赤ちゃんが「うんち、くせえから早くオムツ替えろ」とかいってごらんなさい。「こいつ、なんだよ、エラソーに」ってことになりますよ。

還暦を過ぎたら、できる限り意見はいわない。単語の羅列だけにすると、周りから好かれると思いますよ。

嫌いなオクラを夕食に出されても、「わしゃ、オクラは苦手なんじゃ。何度いったらわかる!」なんていわない。出してくれたかたに悪いじゃないですか。そんなときは見たまんま、「お。オクラだ」で我慢。

頭の中で思うだけじゃなく、うれしそうな声でいうとなお、脳がだまされます。しまいには「オクラ、好きかも」って。

ここを変えるだけで、全然違ってきますよ。文句ばかりの人が突然、単語だけでしょ。周囲からも受け入れてもらえますし、自分もうれしくなります。

「自分の意見を持て」みたいな教育を今まで受けてきましたから、しかたないんでしょうがね。でも、せっかくの余生、文句いったら残りの時間が台無しになります。

遅れていた電車が到着したときも、「おっせえなあ。いつまで待たせるんだよ」などとイラつかず、「お。電車だ」と、うれしそうに迎えましょうよ。

そうやって、かわいく老いていき、そして最後に「あー、楽しかった!」といえるよう、そこは煩悩をフル活用して日々訓練するのがいいんじゃないかと、僕は思っています。

この記事は『壮快』2022年11月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b612666.html