喫茶特集、中盤はホテルのコーヒーパーラーを取り上げていきます。今回の舞台となるのは1954年(昭和29年)に開業した「山の上ホテル」。書籍の街として知られる神田の街にあり、多くの出版社や古書店が集まることから川端康成や池波正太郎などに愛され、多くの作家がホテルで執筆活動をしていたという歴史だけではなく、文化的な舞台ともなる老舗のコーヒーパーラーです。

この空間でいただける絶品のプリンアラモードと、こだわりの珈琲。そして“おもてなし”の心を取材させていただきました。

本の街から始まる、山の上ホテルの物語

JR御茶ノ水駅より徒歩5分とアクセスは良好。まるで山を登るかのように、坂道を上がると「山の上ホテル」が見えてきます。創業者の吉田俊男氏の周囲には、文学関係者が多かったことや、場所柄出版社の多い神保町や神田から近いことも相まって1954年の創業以来多くの作家に親しまれていきました。

2019年に7カ月間の休業を経て「山の上ホテル」自体が大幅リニューアル。ホテルの特徴でもあった「アールデコ様式」が復活するような形で、装いを新たに。このコーヒーパーラー自体は、マイナーチェンジをする程度で創業当時とそこまで変わらないんだとか。

小説を書く人たが執筆活動においてホテルになるような場所。そんなホテルの中にあるパーラーでは、特に池波正太郎さんが最もこの場所を愛したこともあり、店内に飾られている絵画は彼自身が描いたものなんだとか。

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池波正太郎さんが愛した水出しコーヒーの秘密

名物は、実は水出しコーヒー。なんと12時間以上かけており、コーヒーパーラーの一角で抽出し続けています。池波さんは通路側の水出しコーヒー機にいちばん近い席によく座られていたそうで、このコーヒーをこよなく愛していたんだとか。