個人店だから出せる味がある。独自のスタイルをもった“コーヒーの人たち”の誕生


『ベアポンド・エスプレッソ』(下北沢)

編集者:サードウェーブコーヒーのもうひとつの特徴に、個人店が増えたというものがあります。人々のファッションやスタイルの変化にも影響があったのでしょうか。

菅付氏:変化は結構ありましたね。アメリカのサードウェーブは西海岸から押し寄せました。それは立地や地域条例の影響が大きくて、ニューヨークに比べて焙煎のスペースを持ちやすかったから。

個人店が中心なので、皆、自由な装いで、音楽もアナログ・レコードをかけながらのんびりした雰囲気の店が多いですよね。

編集者:今まで企業側が行ってきた消費者のニーズに合わせたコーヒー作りから、自分たちのスタイルを打ち出した提案型に変化したとも言えそうです。

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“人生はエスプレッソ”!編集者・菅付さんが思う情熱をかける面白さとコーヒーの未来について

編集部:菅付さんが編集されたベアポンド・エスプレッソの本について。『LIFE IS ESPRESSO』(ミルブックス)は2011年に販売したものに書き下ろしを加え、文庫本として今年2023年、新装版で出版されました。

私も読みましたが、バリスタである田中さんの半生が面白くてかっこいい。コーヒー好きはもちろん、そうでない人にもお勧めしたい本です。

菅付氏:ひとつのものに情熱をかけて新しいことをやることに僕自身、面白さがあると思っています。更に、テーマが派手でも珍しくもない、みんなが口にする“コーヒー”というのもいいのではと。

田中さんは、日本のコーヒーカルチャーを引率してきた人ですが、一度会えばだれでも好きになる愛嬌と、コーヒーに対する愛を持っている人だと思います。“人生はエスプレッソ”という言葉がぴったりの人です。

編集部:本の中には、コーヒーの未来についても語られています。最後に、菅付さんが考える今後のコーヒーカルチャーの変化について教えてください。

菅付氏:まず、僕が思うサードウェーブコーヒーの1番素晴らしいところは、今までの固定概念から自由になったこと。フレンチローストやイタリアンローストのような豆の味わいが基本という考えから自由になりました。美味しいコーヒーの定義はそれぞれのバリスタが決めればいいんです。

日本人は元々舌が肥えていて、お茶の文化を持っている基盤の上に日本独自のコーヒー文化が発展している。これから新しい概念やプレゼン力を持った人が次の時代のコーヒーカルチャーを作っていくでしょう。
僕の持論ですが、コーヒーショップは、その街の民度のバロメーターだと思っているんです。コーヒーの持つ文化的ポテンシャルはますます大きいと思いますよ。

編集部:本日はありがとうございました。

協力/編集者・株式会社グーテンベルクオーケストラ代表取締役 菅付雅信
Photo提供/写真家 松岡誠太郎

園果わたげ

ウフ。編集スタッフ

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ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。