200兆円以上積み立てている国は、実は日本とアメリカしかない?

よく「年金積立金が枯渇する」=「年金制度の破綻」というロジックが紹介されますが、実際のところ、日本の年金積立金はどのくらいあるかご存知でしょうか。

日本の年金積立金は合計すると200兆円以上あります。実はこの水準に達している国は日本とアメリカ位しかありません。人口比でいえば日本よりアメリカの方が多いですから、日本はアメリカに負けない位貯めている状態です。

では、それ以外の国は、というとほとんどの先進国は積立をしていません。イギリス、フランス、ドイツといった先進諸国は文字通り「世代間の支え合い」に徹しているため、今月の保険料が来月の年金支払いに使われるようなやりくりをしています。

北欧等の一部のユーロ諸国、中国のような人口が多くて少子高齢化が深刻な国は年金積立金を増やしていますが、日本ほどではありません。

「積立金が足りないから年金が破綻する」というのは実はあまり意味があるロジックではないのです。もし日本で足りないとなれば、世界中の年金制度はみんな破綻リスクが高いということになってしまうからです。

ニュースは短期的に株価が値下がりしたときだけ年金運用がマイナスになったと話題にしますが、長期的にみればしっかり増やすことに成功しています。それほど怖がることはないのです。

(広告の後にも続きます)

破綻するのと、減るのとは話がまったく違う

少し制度について詳しい人は「でも、年金減るんでしょ?」と言うかもしれません。確かにそのとおりです。

マクロ経済スライドという仕組みで、簡単にいえば物価が上昇したとき、年金額を同じ割合ではアップしない仕組みです。といっても原則としては「金額」では減らないことになっています。金額では少し増えているのですが、物価上昇分を考えると実質的には減る、というのは少し分かりにくいですが、そんな仕組みが用意されています。

また、「若者の未来の年金」だけを減らすのではありません。「今、年金をもらっている世代の年金」も調整していきますので、マクロ経済スライドにおいては世代間の不公平も起きない仕組みになっています。

そしてこの調整は、保険料の収入と年金の給付を長期的にバランスさせることを目的として実施されますので、ある日いきなり破たんするということは理屈としてあり得ない、ということにもなります。

つまり、「破綻の心配をする」のと、「給付水準が少し下がる」というのは別の頭で整理をしておく必要があるわけです。

なお、この給付水準引き下げへの対応策については、先ほどの「長く働いて遅くもらい始める」ことで増額をすることができます。国の年金は65歳より遅くもらい始めると1年あたり8.4%増額することになり、その金額で一生もらい続けることになります(最大で75歳からもらうと84%アップ)。

国の試算では67~68歳くらいまで働いて年金額をアップすることができれば、それは給付の引き下げ分をほぼ打ち消すとしています。

これからの時代、67~68歳まで働くことは難しいことではありませんから、今後給付の水準が下がったとしても、それを補うことは十分に可能なのです。