確定拠出年金は退職金制度の一つ!退職一時金との違いや税金について解説

確定拠出年金は、退職金制度の1種です。従来の退職一時金制度と同じく、老後生活の資金を準備できる制度ですが、詳細な内容には違いがあります。この記事では、確定拠出年金の主な特徴や従来の退職金との違いなどを解説します。退職所得控除の5年ルールに注意して、退職金やiDeCoの老齢給付金を受け取りましょう。

確定拠出年金の受け取り方法とかかる税金

確定拠出年金は、一括受取と年金受取で税金のかかり方が異なります。ここでは、確定拠出年金によって受給できる一時金または年金(老齢給付金)の受取方法ごとに税金の計算方法を解説します。

一時金として受け取る場合の税金の計算方法

老齢給付金を一時金で受け取る場合は、受取金額から「退職所得控除額」を差し引いた金額の半分が課税の対象となります。

退職所得控除額の計算方法は、以下の通りです。

上記の計算結果が80万円未満の場合、退職所得控除金額は80万円となります。

例えば、勤続年数35年の人が2,000万円の退職金を受け取った場合、退職所得控除額と課税の対象となる退職所得額は、以下の通りです。

〇退職所得控除金額
退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20年)
=800万円+70万円×(35年−20年)
=800万円+70万円×15年
=800万円+1,050万円
=1,850万円

〇退職所得の金額
退職所得の金額=(老齢給付金の受取額−退職所得控除金額)×1/2
=(2,000万円−1,850万円)×1/2
=75万円

よって、2,000万円の老齢給付金を受け取ったとしても、そのうち課税の対象となるのは75万円です。

年金として受け取る場合の税金の計算方法

確定拠出年金の老齢給付金を年金形式で受け取る場合は「雑所得」なり、老齢年金などのほかの公的年金とあわせて「公的年金等控除」が適用されます。

実際に、公的年金等に係る雑所得を計算する時は、速算表を用います。公的年金等に係る雑所得を除いた所得金額が1,000万円以下である場合の速算表は、以下の通りです。

■公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が1,000万円以下(令和2年分以降)
受け取る人の年齢が65歳未満の場合

■公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が1,000万円以下(令和2年分以降)
受け取る人の年齢が65歳以上の場合

【参考】国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」詳しくはこちら

例えば、公的年金等の収入金額が400万円、年金の受取開始年齢が65歳であるとしましょう。公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が800万円である場合、課税の対象となる雑所得の金額は、以下の通りです。

・公的年金等に係る雑所得=収入金額×0.75−275,000円
=400万円×0.75−275,000円
=2,725,000円

所得税を計算する際は、上記の金額とその年のほかの所得(給与所得・事業所得など)を合算します。

年金で受け取る場合、残りの年金資産は運用され続けるため、一時受取よりも受給総額は増える可能性があります。また、年金として分割受取であれば、受け取ったお金をすぐに使ってしまうことも防ぎやすいでしょう。

ただし、年金で受け取る場合は、一時金受取と比較して課税所得が増える可能性があるため、税制面では不利になるかもしれません。課税所得が増えると、国民健康保険料や介護保険料なども増えてしまう可能性もあります。

確定拠出年金の老齢給付金はどのように受け取るのがお得なのかは、ほかの所得金額や保有資産などで異なるため、ご自身の状況に合った選択を考えることが大切です。

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退職所得控除の5年ルールとは?

一定期間内に、退職金や確定拠出年金の一時金を複数受け取ると、退職所得控除を計算する際に「5年ルール」が適用されます。

5年ルールは、退職金を受け取る前年の4年以内に別の退職金を受け取ると、退職所得控除額を計算する際に、重複する勤続年数は含まれなくなるというルールです。ここでいう退職金には、一時金で受け取ったiDeCoの老齢給付金も含まれます。

例えば、iDeCoの老齢給付金を一時金で受け取ったあとに、65歳で退職金を受け取るとしましょう。退職金を受け取った職場で働いていた期間は、30歳から65歳までの35年です。
iDeCoに45歳から加入し、60歳で老齢給付金を一時金で受け取る場合、退職金を5年後に受け取ることになるため、5年ルールは適用されません。

しかし、64歳になった時にiDeCoの老齢給付金を一括で受け取り、その後65歳で退職金を受け取ると、5年ルールが適用されます。
この場合、あとで受け取った退職金の退職所得控除額を計算する際、勤続年数(35年)とiDeCoの加入期間(45歳から64歳)のうち重複する19年は含まれません。

注意すべきなのは、iDeCoの老齢給付金を先に受け取るケースです。というのも、iDeCoの老齢給付金を受け取った前年から数えて19年以内に退職金を受け取っていると、退職所得控除額の計算時に重複期間分が差し引かるためです。

例えば、65歳で退職金を受け取り、70歳でiDeCoを一括で受け取ると、退職所得控除額が調整されてしまいます。退職金とiDeCoの老齢給付金を受け取れるのであれば、先にiDeCoを受け取り、そこから5年以上経ったあとで退職金を受け取るのがよいでしょう。

ただし、退職所得控除の調整に関するルールは、将来的に変更されるかもしれません。確定拠出年金の老齢給付金や退職金の受取方法を決める時は、金融機関やファイナンシャル・プランナーに相談をするのも1つの方法です。