新時代のエレガンスを追い求めて

この春は、多くのブランドが「エレガンス」の本質を追求するスタイルを提案。パリの国立美術史研究所(INHA)の美しい図書館「Salle Labrouste」を舞台に、トップブランドの最新作を優雅に纏ったストーリーをお届け。

ロエベ

捻りと遊び心が利いたニューベーシック

「ロエベ」は今季、ベーシックなアイテムのシルエットやプロポーションを変化させることで、新しいスタイルを表現。Tシャツのようにシンプルなトップスと、ボーイッシュなショートパンツは、しなやかなレザーで仕立てられているのが「ロエベ」らしい。噛み切られたような裾のデザインがユニークなアクセントを添えて。


トップス¥562,100 パンツ¥500,500[ともに参考価格](ともにロエベ/ロエベ ジャパン クライアントサービス)ネックレス[参考商品](Goossens)

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シャネル

南仏の庭園をイメージした心躍るフラワーモチーフ

南仏の名建築である邸宅「ヴィラ ノアイユ」の庭園をインスピレーション源にしたコレクションを発表した「シャネル」。メティエダールのアトリエ「ルサージュ」による刺繍が施された美しいフラワーモチーフが、ポップなダブルCとミックスされて開放感溢れるムードを描き出す。


ジャケット¥3,456,200 パンツ¥724,900 シューズ¥456,500(すべてシャネル/シャネル カスタマーケア)

Interview
歴史の狭間で忘れ去られた芸術家や作品に光を当てる
Éric de Chassey・INHAディレクター

今回のファッションストーリーの撮影のロケーションとなったフランス・パリのINHA(国立美術史研究所)の図書館「Salle Labrouste」。1860年に設計された美しいドーム型の建築に圧倒されるこの空間には、美術史や考古学を専門とした180万冊以上の所蔵資料を誇る。そのINHAのディレクター、Éric de Chassey(エリック・ドゥ・シャセ)氏にインタビューを行った。バロック時代のフランス画家であるニコラ・プッサンから1970年代パンクのサブカルチャー、そしてブリジット・ライリーのような現代アーティストまで、実にさまざまな分野に関心を持つ美術史家でもあるシャセ氏。美術史の重要性やアートに対する彼の見解を聞いた。

美術史を学ぶことにはどのような意味がありますか? なぜ重要なのでしょう?
私たちはイメージに囲まれて生きていますが、それを読み解くためには、まず読み方を学ばなければならないのです。そして、その日常生活で目にするイメージを、より深く理解するために「美術史」が役立ちます。私は、美術の研究は常に社会とつながり、現在に根ざしていなければならないと強く信じています。美術史は、過去の有名な芸術家たちだけに焦点を当てるのではなく、無名の芸術家にも焦点を当てるべきです。それは歴史的にはほとんどの女性芸術家に当てはまることで、彼女たちにもフォーカスするべきなのです。さらに美術史には、ファッション写真のような、昔は芸術的とは見なされなかった作品も含まれるべきです。その忘れ去られた芸術家や作品には、見つけ出して共有すべき、価値ある知識が隠れている。それらは非常に知的な刺激に満ちています。

過去の美術史上で女性たちがほとんどフォーカスされてこなかったことをどう思いますか?
その昔、芸術の道は女性にはほとんど閉ざされていました。16世紀に書かれた西洋美術史の最初のテキストであるジョルジョ・ヴァザーリの『芸術家列伝』にも何人かの女性たちの記載があるものの、どちらかといえば疎外された人物として描かれていることが多い。19世紀になると状況は変わり始めましたが、それでも女性芸術家は肖像画や花のようなマイナーなジャンルの担い手として限定されることが多く、例えば人体解剖学を学ぶことも許されませんでした。もともと人数が少なかった上に、芸術家として十分に成長することも妨げられ、面白い芸術作品を生み出す女性芸術家はさらに減っていきました。その上、彼女たちの作品の価値に対する偏見も強かったため、そのほとんどが保存されていません。美術史家としての私たちの役割は、そういった過去の状況を検証し、差別制度が現在ではもはや存在しないことを確認し、歴史の狭間で忘れ去られた女性芸術家に光を当てることです。

人々がネット上で画像を過剰なまでに消費していることについてどう思いますか?
ソーシャルメディアは、複雑な考えを発展させたり、共有したりするのには適していないと思います。私たちはプラットフォームを使って、人々がより深いところへ行くよう促す活動をしていますが、研究とは真実を主張し、それを他人に押し付けることではないのです。イメージが私たちに問いかけ、私たちがイメージに問いかける。そのように皆が自問自答し、答える力をつけてほしいのです。ソーシャルメディアの素晴らしいところは、驚くほど効果的な画像共有ツールだということ。しかし、美術史家である私は、イメージのインパクトはその物質性、つまり大きさ、スケール、年代、匂い、場所……といった具体的な側面にも左右されることを知っています。目で見るだけでなく、体全体で感じるものなのです。

人々が美術史に関心を持つ理由は何だと思いますか?
多くの場合、私たちは学ぶことを退屈なことだと考えています。しかし学ぶことで分かる真実とは、知れば知るほど喜びが増すものなのです。美術史は、私たちが見ているイメージの世界を楽しみながら、より深く理解することを可能にしてくれるのです。

translation: Tomoko Kawakami

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