香りの余韻に包まれる、圧巻のデザートコース

続いては室岡さんの真骨頂である、デザートコースを一つ一つ紐解いていきます。まずデザートコースは完全予約制。13時から開始の回と、17時からの1日2回転になっており、価格は季節と食材にもよりますが。だいたい1万8000円程度で、お酒とのペアリングにすると+5000円となっています。品数はだいたい5~6品と、ペアリングのドリンク(アルコールorノンアルコール)が3品程度となっています。

OPENしたばかりの現在はコースのみですが、ゆくゆくはお店の営業がある金土日以外の日を焼き菓子の販売日にしたいそう。

まず一皿目が真っ白なデザート。室岡さんの地元である静岡県の富士山麓の朝霧高原の新鮮な牛乳を使用。朝霧高原をイメージしており、ジェラートは濃厚でありながらも口どけはなめらか。富士山の美味しい水と空気、そして牧草をイメージした器をオリジナルで作ってもらったそう。1品目からシンプルながらも素材の良さを大切にしている、室岡さんのアイデンティティあふれる一皿でした。

食べている途中で、塩とオリーブオイルをかけることで味の変化だけではなく、牛乳の甘みがぐっと引き出され、シンプルながらも計算し尽されています。

続いては室岡さんが最も得意とするフレッシュな柑橘を使ったデザート。下はフランス発祥のチーズケーキであるクレームダンジュと、その上には甘酒のジェラート。八朔に清美オレンジはフレッシュで使用し、デコポンは果汁を絞り、皮を加えてジュレに。金柑はシロップをぎゅっとしみ込ませて、コンポートの状態に。最後は黄金柑×清見タンゴールを掛け合わせて生まれた姫小春の皮をふりかけます。大きな木になるけれど、収穫量の少ない柑橘。

柑橘それぞれが持つ特性。例えば甘み、渋み、苦み、食感を存分に引き出し、柑橘の良いところも悪いところもあえて美味しさの一つとして調合していく様子はまるで魔術師。柑橘の魔法がかけられた一皿に、さらにレモンバームやレモンマリーゴールドの野性味あふれる香りが踊ります。

ペアリングのワインはドイツのリースリングワインで、デザートワインのような甘みは、柑橘のデザートの甘みの部分を補ってくれるような組み合わせ。柑橘の酸味や香りの余韻をより引き立たせてくれます。

箸休めならぬスプーン休めとして、2品が。まずは淡路島の新玉と金時人参、紫人参、京くれないの3種の人参のチュイールやピューレを使ったこちらの一皿。

口の中でまるで野菜のポタージュを飲んでいるかのような甘みとコク、そして新玉のアイスパウダーをかけた仕上がりはまるで野菜スープのようなうま味を感じます。

そして続いては生地からその場で作り焼き上げられるフォカッチャが。焼きたてだからこそ美味しく、さらに生ハムの塩味が一度口の中をリセット。この生ハムにもこだわりがあり、軽く熟成させた繊維質がやわらかなメス豚の生ハムなんだとか。温かいものをこのタイミングで食べられる嬉しさは、料理のコースと真逆の発想ながらも理に叶った流れに。

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このお店を背負うスペシャリテ「水カカオ」のグラスデザートの凄み

「コースの定番にしようと思っているメニューがある」そう話す室岡さん。続いて出されたグラスデザートが、そのうちの一つになるそう。

「水カカオ」と名付けたメニューで、お水のように飲めるチョコレートをイメージして表現されたグラスデザート。カカオを水で伸ばし作るアイスは最近注目の手法で、カカオが持つ苦味、酸味、コク、香りを感じながら重たくなく、すっと口の中で消えていくのが特徴。

寒天で固めたカカオのお出汁と、水とカカオで作ったアイス、そして食感とコクのジャブを打ってくれるコーヒーは、コロンビア産深煎りコーヒーのグラニテ。中目黒のカフェファソンさんの豆を使用し室岡さんの徹底した素材選びのこだわりを感じます。仕上げは丸い甘みと香りを感じられるカカオの泡と極薄のチュイール。

これ以外にも、季節によってメインのデザートをパフェにするという。“水カカオとパフェ”この2つがこのお店の主役になるそう。