王道でありながらひと手間かけたスフレ、ヴァシュランがメインディッシュに

そろそろまた温かいものが食べたい、そう思ったタイミングで登場したのはスフレ。丸ごとせとかを器にして焼き上げられたスフレは、実は薫時代の室岡さんのスペシャリテ的メニュー。くり抜いた果汁でアングレーズ(カスタード風味のソース)を作り、メレンゲと合わせて焼き上げています。食べてみると上の部分はよく焼けていてふわふわ、中の器の部分は果汁がじゅわっと合わさり、トロトロ食感に。

キャラメルソースを途中で入れることで、口の中でクレープシュゼットになるという。

そしてデザートコースの定番でもある、ヴァシュランは季節の苺をふんだんに使用。苺は品評会でも金賞を獲得した埼玉県産のあまりん、そしてとちおとめの2種類を組み合わせに。アイスもこの2つをブレンドし、甘みが強いあまりんだけではなく、とちおとめの苺らしい酸味や香り、さっぱりした後味を合わせることで苺の持つ本来の美味しさをしっかり引き出します。

苺に合わせるのはピスタチオのセミフレッドアイスクリームに、ローストしたピスタチオにフロマージュブランを合わせ、苺に合うようにレモンの酸味を加えてバランスを取ります。

そしてメインディッシュも終わったところで、ここで出てきたにはまさかの「チュロス」。着想は室岡さんが大好きという、TOHOシネマズのチュロスから。その味が大好きで、チュロスをシナモンシュガーでシンプルに仕立てています。

揚げたてで中はトロッと。そして盛り付けたお皿は、Tetsuya Hirota氏の作品。器と作家さんが好きな、室岡さんのセンスと世界観が広がります。そこに器があれば、デザートが生き生きとするかのように…。

最後に、とってもかわいらしいサイズ感のお茶菓子が。苺とカスタードクリームを合わせたミニマカロンと、焼き芋にしたさつまいも「紅はるか」のモンブラン。こちらも室岡さんがお茶菓子として、定番に出していた組み合わせです。

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素材と向き合い、徹底した追及が食材の良さを引き出す

室岡さんが考える「デザートコースの在り方」を伺うと、お料理の後のデザートとコースで出すデザートでは甘さの分配やボリュームも変わってくるとのこと。これまで勉強のためにデザートコースを食べてきた経験と、前職の職場で出していた料理のコースを参考にして流れを考えているんだとか。

酸味、苦味、甘味、塩味、あったかい、冷たい、煮る焼く蒸すetc.様々な調理方法を使って、飽きさせず最後までお腹いっぱいになりすぎないように。そして提供するタイミングも大切にしながらコースを考えているそう。さらにコースの流れだけではなく、食材を大切にする姿も。

室岡さん「“使っている食材の良さをいかに伝えられるか”ということに、全神経を集中させています。せとかのスフレもそうで、本来捨てられる皮を余すことなく使用し、うま味をしっかり出し切っています

フルーツはそれだけでとっても魅力的なので、そのフルーツのキラキラしている感じやシズル感は魅せる部分として大切にしています。今回お店を作るにあたり、たくさんの作家さんに私のデザートのイメージを伝えました。そのデザートのために作られたお皿もあります。その器の部分も一緒に楽しんでいただけたらと思います。」

パティシエという仕事が魅せられる新しい領域や世界観を存分に堪能できる、室岡さんのデザートコース。ぜひ一度ご賞味あれ。

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Haruka Murooka
東京都港区南青山1丁目21−9 LUXE南青山 1F-B
営業時間:13:00~20:00
定休日:月、火

Photo&Writing/坂井勇太朗