老後に向けた貯蓄に取り組む中で、「わが家の貯蓄はできているほうなのか?」「他の家庭はどれくらいしているものなの?」と世間一般の水準が気になる人は多いのではないでしょうか。ゆとりある老後のために、今の自分の貯蓄額や貯蓄ペースを見直したいと思っている人もいるでしょう。
本記事では、高齢者世帯の貯蓄額の分布について紹介し、貯蓄額と生活のゆとり・苦しさの関係について国民生活基礎調査をもとに解説します。自分の貯蓄レベルや今後の貯蓄を考える際の参考にしてみてください。
高齢者世帯における貯蓄額の分布
国民生活基礎調査(2022)の「各種世帯の貯蓄額階級別・借入金額階級別世帯数の構成割合」によると、高齢者世帯の貯蓄額の分布は図表1のようになっています。
図表1
貯蓄等級額 | 世帯割合(%) |
---|---|
貯蓄がない | 11.3 |
~100万円未満 | 6.4 |
100~500万円未満 | 18.8 |
500~1000万円未満 | 13.7 |
1000~1500万円未満 | 9.2 |
1500~2000万円未満 | 5.3 |
2000~3000万円未満 | 8.7 |
3000万円以上 | 14.0 |
貯金額・貯金有無不詳 | 12.6 |
厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅱ各種世帯の所得等の状況より筆者作成
「老後2000万円問題」で話題になりましたが、老後資金の一つの目安である2000万円を超えている世帯は、貯金額・貯金有無不詳世帯を除く全体の22.7%に限られ、およそ65%の世帯は貯蓄が老後までに2000万円に達しなかった、もしくは2000万円を貯めていたけれど老後生活での取り崩しによってその資産が減少していることがわかります。
さらに、貯蓄が500万円未満の世帯は36.5%と、3世帯に1世帯はまとまった貯蓄がない状態で老後の生活をしていることが見えてきます。
65歳時点で1500万円の貯蓄がある世帯は、貯金額・貯金有無不詳世帯を除けば高齢者世帯の上位28%に入っており、2000万円には達していないものの、決して少ないほうであるとはいえません。ただし、毎月6万円取り崩すと20年ほどで資金が枯渇してしまう貯蓄額であることを忘れず、貯蓄を取り崩さず年金である程度やりくりできる生活レベルを意識することが必要です。
「生活が苦しい」と感じる高齢者世帯は約半数
目安の2000万円の貯蓄を持つ高齢者世帯は、思いのほか少ないことがわかりました。では、年金と貯蓄の取り崩しが生活費の基本となる高齢者世帯において「生活が苦しい」と感じる世帯はどれくらいの割合でいるのでしょうか。国民生活基礎調査(2022)「各種世帯の生活意識」によると高齢者世帯のうち約半数の48.3%が、生活が苦しいと回答しています。
●「大変苦しい」「やや苦しい」48.3%
●「普通」45.1%
●「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」6.6%
苦しいと回答した世帯の割合48.3%は、貯蓄1000万円未満の世帯割合50.2%と重なります。年金額や支出にもよりますが「1000万円の貯蓄」が生活を苦しいと感じる境目になっている可能性もあるのではないでしょうか。
一方、ゆとりを感じている世帯は全体の6.6%のみであり、貯蓄3000万円以上の世帯14%と比較してもその半分以下です。老後の生活に余裕を感じることの難しさを物語るデータです。
配信: ファイナンシャルフィールド