夫が58歳で死亡。年金を受給できずに死亡すると「払い損」になる? 妻が受け取れる「遺族年金」についても解説

年金の受給は原則65歳からです。年金に加入していた人が65歳になる前に亡くなってしまった場合、これまでの保険料は払い損になってしまうのでしょうか。実は、年金制度のなかには「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」「寡婦年金」「死亡一時金」があり、まったくの払い損にはなりません。
 
そこで、本記事では「夫が58歳で死亡した妻」を例に挙げながら、年金制度について解説していきます。

遺族年金とは?

遺族年金とは、年金制度の加入者または加入者であった人が亡くなった場合、その人によって生計を維持されていた遺族に支給される年金です。遺族年金には「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、年金の加入状況によっていずれかまたは両方を受給できます。

 

遺族基礎年金を受給するには、次のいずれかを満たす必要があります。

 

●国民年金の被保険者が死亡したとき(死亡日の前日において保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要)

●国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本に住んでいる人が死亡したとき(死亡日の前日において保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要)

●老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限る)

●老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限る)

 

受け取ることができるのは、死亡した被保険者によって生計を維持されていた子ども(18歳になった年度の3月31日まで、障害等級によっては20歳未満)または子どものいる配偶者になります。

 

令和5年4月分から支給額は、子どものいる配偶者が受け取る場合は「79万5000円+子の加算額」で、子どもが受け取る場合は「79万5000円+2人目以降の子の加算額」を子の数で割った額が1人あたりの額です。子どもの加算額は1人目と2人目のが各22万8700円で、3人目以降が各7万6200円になります。

 

遺族厚生年金を受給する場合には、次のいずれかを満たす必要があります。

 

●厚生年金の被保険者が死亡したとき(保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要)

●厚生年金の被保険者期間中に初診日がある病気やけがによって、初診日から5年以内に死亡したとき(保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要)

●1級・2級の障害厚生年金の受給者が死亡したとき

●老齢厚生年金の受給権者が死亡したとき(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限る)

●老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限る)

 

受給できるのは、死亡した被保険者によって生計を維持されていた子のある配偶者、子ども、子のない配偶者、父母、孫、祖父母です。支給額は「報酬比例部分×4分の3」です。

 

次のいずれかに当てはまる場合、妻には中高齢寡婦加算があります。

 

●夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子どもがいない妻

●遺族厚生年金と遺族基礎年金の受給者である子どもがいる妻が、子どもが18歳(障害等級によっては20歳)到達年度の末日に達したため、遺族基礎年金をもらえなくなったとき

 

支給額は40歳から65歳になるまでの間、年額で59万6300円です。

 

また、次のいずれかに該当する場合は経過的寡婦加算があります。

 

●昭和31年4月1日以前生まれの妻に65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生したとき

●中高齢の加算がされていた昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達したとき

 

寡婦年金とは?

寡婦年金とは、死亡した夫によって生計が維持されていた妻に支給される年金です。受給するには、夫が死亡した日の前日に国民年金の第1号被保険者で、受給資格期間が10年以上あり、夫との婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)が継続して10年以上ある場合に支給されます。

 

亡くなった夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受給したことがあったり、妻が繰り上げで老齢基礎年金を受給していると支給されません。年金額は夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3の額です。

 

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