知っておきたい!高額療養費制度はとても頼りになる制度

健康保険に加入していると、病気やけがをして病院に行っても、医療費の自己負担額は最大3割です。年齢や所得によっては1割、2割で済むこともあります。医療機関や薬局の窓口で保険証を提示すれば、医療費を大きく減らすことができます。
 
しかし、病気やけがの種類によっては、入院や通院が長引き、1ヶ月の自己負担額が高額になってしまう場合もあります。そんなときに役立つ制度が高額療養費制度です。

高額療養費制度の自己負担限度額

高額療養費制度は、1ヶ月(毎月1日から末日まで)の自己負担が上限額を超えた場合に、その超えた分を請求すれば返金してもらえる制度です。自己負担額の上限額は、年齢や所得の水準によって変わります。まずは、図表1の自己負担額上限一覧表を確認してください。

 

厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(平成30年8月診療分から)より筆者作成

 

例えば、年収400万円の人(70歳未満)の1ヶ月の医療費が100万円で、窓口では3割負担として30万円を支払ったとします。

 

この人の自己負担限度額は、図表2のとおり8万7430円(=8万100円+(100万円-26万7000円)×1%)です。残り21万2570円(=30万円-8万7430円)は、高額療養費制度の申請を行うことで戻ってくるのです。

 

厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(平成30年8月診療分から)より筆者作成

 

高額療養費制度は、先にいったん医療費を支払って、後から払い戻しを受ける制度です。しかし、前もって健康保険に「限度額適用認定証」を申請しておけば、自己負担分だけの支払いだけで済ませることもできます。

 

なお、「オンライン資格確認システム」を導入している医療機関等では、情報提供に同意することにより、限度額適用認定証がなくても、健康保険証またはマイナンバーカードのみで、窓口での支払いを自己負担限度額までとすることができます。

 

さらに、過去12ヶ月以内に3回以上自己負担額の上限額に達した場合は、4回目から自己負担額が引き下げられます(多数回該当)。大病を患って入院期間が長引いた場合などには、必ず申請しましょう。また、この制度は医療機関にかかった月の翌月1日から2年間さかのぼって支給を申請することも可能です。

 

高額療養費制度でカバーできない費用

高額療養費制度はとても頼りになる制度ですが、カバーできない費用もあります。例えば、入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる費用などです。

 

食事代は、基本的に1食当たり460円となっています(全国健康保険協会「入院時食事療養費」参照)。1日460円×3食=1380円となるので、10日入院では1万3800円(=1380円×10日)になります。

 

また、差額ベッド代は、希望して個室や少人数部屋(4人まで)に入室したときにかかる費用です。厚生労働省に設置される「中央社会保険医療協議会」の「主な選定療養に係る報告状況」(令和5年7月5日開催)によると、1日当たりの平均は6620円となっています(令和4年7月1日現在)。

 

個室のみの平均額は8322円と高く、2人部屋だと3101円、3人部屋だと2826円、4人部屋は2705円となっています。入院日数分の費用が自己負担となります。

 

そして先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養のことです。治療費は健康保険の対象外なので、全額自己負担です。

 

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