年金生活の友達夫婦が、毎月旅行に出掛けています。一体どれくらい受給しているのでしょうか?

同じ年金生活者の友人が、自分よりも豊かな生活をしていると、うらやましく感じるとともに、友人の年金受給額が気になることがあります。
今回は、公的老齢年金の受給額の最大値について解説します。

2階建ての年金制度

わが国の年金制度は、自営業者などの第1号被保険者、会社員などの第2号被保険者、および第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者の区分ごとに、下図のとおり2階建て構造になっています。

1階部分は全被保険者共通の国民年金(基礎年金)、2階部分は第2号被保険者が加入する厚生年金になっています。

 

そして、上乗せの年金制度として、一部の第2号被保険者には企業年金が、第1号被保険者で希望する人が加入する国民年金基金や付加年金が、および個人ごとに加入する個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。

 

図表1

 

企業年金やiDeCoなどは加入要件がさまざまなので、今回は、加入要件が共通で主たる収入となる「公的年金(国民年金と厚生年金)」における老齢年金の受給額について解説します。

 

公的老齢年金額には上限がある

公的老齢年金の受給額には、制度上、上限値が設定されています。

なお、公的老齢年金は、受給開始年齢を66歳以降に繰り下げて受給すると、繰り下げた期間に応じて受給額が増加しますが、ここでは65歳から受給を開始した場合に限定して解説します。

 

1.老齢基礎年金の上限額

20歳から60歳までの40年間、第1号被保険者として国民年金保険料を全額支払うか第2号被保険者または第3号被保険者であった場合に、以下の満額の老齢基礎年金を受け取ることができます(※2)。

 

令和5年度の老齢基礎年金の額(満額)=79万5000円(注)

注:昭和31年4月1日以前生まれの方は、79万2600円となります。

 

2.老齢厚生年金の上限額

老齢厚生年金の額は、下式により算出されます(※3)。

 

老齢厚生年金額=報酬比例部分+(経過的加算+加給年金額)

 

このうち経過的加算とは、年金制度改正に伴う差額を補うもので、その額はわずかです。また加給年金額とは、一定の要件を満たす方が65歳になった時点で、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者、または18歳到達年度の末日までの間の子(または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子)がいるときに、一定額の年金が加算されるものです。

報酬比例部分は、厚生年金に加入していたときの報酬額と加入期間などをもとに、下式により計算される額で、老齢厚生年金の主要な金額となります(※4)。

 

報酬比例部分(注)=平均標準報酬額×0.005481×加入期間の月数

注:平成15年3月以前の加入期間に関する計算方法は異なります。

 

報酬比例部分の算定に使われる「平均標準報酬額」は、在職中に支払う厚生年金保険料の算定に用いられた「標準報酬月額」と「標準賞与額」の合計額を、厚生年金の加入期間(在職期間)の月数で割った値となります。

 

平均標準報酬額=(標準報酬月額の合計額+標準賞与額の合計額)÷加入期間の月数

 

なお、標準報酬月額と標準賞与額は、実際に支給される報酬額や賞与額とは異なり、上限額が設定されています。

現在の標準報酬月額の上限額は65万円で、月額63万5000円以上の報酬を得ている方は一律65万円として計算されます。また、標準賞与額は、実際に支給される税引き前の賞与額から1000円未満の端数を切り捨てたもので、150万円が上限となります。なお、賞与の回数は年3回以下とされています(※5、6)。

仮に、1年間にわたり月額63万5000円以上の報酬が支払われ、かつ1回当たり150万円以上の賞与が年3回支給された場合、平均標準報酬額は下式のとおり102万5000円になります。

 

平均標準報酬額=(65万円×12月+150万円×3回)÷12月=102万5000円

 

従って、20歳から60歳までの40年間厚生年金の被保険者として働き、上記の収入を得たとすると、65歳から受給する報酬比例部分の額は269万6652円となり、この値が老齢厚生年金の上限額となります。

 

報酬比例部分=102万5000円×0.005481×480月=269万6652円

 

関連記事: